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2006年11月28日

[交流分析の人生脚本(Life Script)]

交流分析の人生脚本(Life Script)

アメリカの精神科医・エリック・バーン(1910-1970)が構築した精神分析の口語訳と言われる『エゴグラム(egogram)』『インパス(impasse)』については過去の記事で説明した。ここでは、交流分析理論で人生全般の青写真や航路図面の役割を果たす『人生脚本(Life Script)』と幼少期の親子関係を通して漸進的に形成される『人生の基本的立場』について取り上げる。

人生脚本(Life Script)とは、自分の人生全体の大まかな計画(シナリオ)であると同時に、未来の自分の生活や行動を暗黙裡に決定する影響力を持つ『人生に対する確信的な信念体系』である。人生脚本が楽観的な予測に従って書かれていれば、人間は多少の苦難や不安に直面しても『これを乗り切れば後は何とかなるはずだ』という自己肯定的な認知を持つことが出来るし、意欲的に苦難に対処していくことも出来る。反対に、人生脚本が悲観的な予測に従って書かれていれば、それほど深刻でない苦境や挫折に直面しても『この苦境を克服できないので、自分の人生は悲惨なものになる』という過度に悲観的な認知を取ってしまい、問題を解決する為の適切な対応が出来なくなる。

人生脚本は、人生のドラマの筋書きを大枠で規定するシナリオ(脚本)なので、破滅的な結末を迎える脚本は、建設的な良い結末につながる脚本に書き換える必要がある。それと同様に、悲観的な思い込みを誘発する人生脚本は、楽観的な思い切りの良さを促進する人生脚本に変換していくようにすると良いし、問題(失敗)の責任を自分だけに帰属してしまう自己否定的な脚本も、自己肯定的で自分の自信や意欲を高める内容の脚本に書き換えた方が良い。

『楽観的・悲観的』『肯定的・否定的』『自罰的・他罰的』『積極的・消極的』『二元的・多元的』といった二項対立図式で人生脚本の大雑把な内容を考えることが出来るが、もっと簡潔に人生脚本を考える場合には、以下の『問題解決の方法で分類した3つのシナリオ』に絞り込むことが出来る。

1.やればできる……発達早期において両親から発達課題の達成を褒められるなどして、自分の素質や能力に対する自信を強め、自己への信頼感が十分に強化されている人の脚本である。自己の持っている才能や素質を開花させて問題や困難の解決に意欲的に取り組むことが出来る建設的で楽観的な脚本である。

2.どうせやっても駄目だ……発達早期において両親からの賞賛や評価を得られず、その後の幼少期・児童期でも、他者から否定的な取り扱いや批判的な言動を受けた為に、自分の能力や努力への自信を喪失している人の脚本である。『どうせやっても駄目だ』という確信的な信念体系は、学習性無力感によって強化されていく自己否定的で破滅的な脚本である。幼少期の頃から、問題を解決する為の努力や他者から評価される為の工夫を何度もしてきたが、その全てに失敗してきたために、良い結果を得る為に前向きに努力して頑張ることに意味が見出せなくなっている。
良い結果を獲得しようとして一生懸命に努力をしても、権威者(親・教師)から否定されたり、全く良い結果につながらなかったりすると、確かに誰でも多少はやる気を失ってしまう。しかし、この人生脚本から脱け出せずにいると、自暴自棄(自堕落)になって破滅的な振る舞いをしたり、自己憐憫を感じて抑うつ感に陥ってしまうので、段階的に自助努力の意欲につながる成功体験を積み重ねて脚本を書き換える必要がある。

3.どうすれば良いのか分からない

『やればできる』というほど前向きな問題解決の姿勢を持っているわけでもないが、『どうせやっても無駄だ』というほど後ろ向きで自己否定的な立場を取っているわけでもないという他力本願な人の脚本。問題や困難を克服する為のマニュアル的な努力(取り組み)をしてみるが、上手く問題を解決できない場合には、すぐに状況の閉塞感や能力の限界を感じてしまう。今まで実施した事のない新規の方法や革新的な取り組み方には強い不安を感じてしり込みしてしまい、どうしたら良いのか分からないので解決方法を教えて欲しいという他者依存的な態度を示す。
この脚本の問題点は、自分自身の人生の責任や義務を自分ひとりで引き受けるだけの『自立自尊の気構え』が持てないひ弱さや不安定さにある。親密な関係にある配偶者や恋人、友人が、適切なアドバイスをくれたり親身になって手助けしてくれる場合には何とか現実状況に適応できるが、周囲の援助や助言がなくなると自分ひとりでは問題に対処できないという欠点を抱えている。



posted by ESDV Words Labo at 08:10 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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