プレマックの原理(Premack principle)
行動主義心理学を研究したD.プレマック(D.Premack)が提唱した、特定の行動を強化するための原理が『プレマックの原理(Premack principle)』である。プレマックの原理では、二つ以上の独立した行動の強化がそれぞれ別々のものではないと考え、ある『非自発的な行動』を強化するためには、それ以外の別の行動(好きな行動)を一緒にすることが効果的であると説く。
J.ワトソンやB.F.スキナーに代表される行動主義心理学(行動科学)は、行動の生起頻度を『条件反射・正と負の強化子(報酬と罰の刺激)』でコントロールしようとする学問分野であり、心理臨床分野でも行動療法の基礎理論として応用されている。プレマックの原理というのは、『高い頻度で生起する行動=自発的・意欲的な行動』を用いることで、『低い頻度でしか生起しない行動=非自発的・無気力的な行動』の発生頻度を増やせるというシンプルな原理である。
報酬(正の強化子)と罰(負の強化子)を用いて行動の生起頻度を調整するオペラント条件づけ(道具的条件づけ)と似た部分もあるが、プレマックの原理では『自分が好きな報酬になる行動(高頻度で起こる行動)』を効果的に用いることで、『自分が嫌いな罰(不快・ストレス)になる行動(低頻度でしか起こらない行動)』を増やせるということが示されている。
分かりやすく言えば、『やりたい行動・自発的な行動』を後回しにして『やりたくない行動・義務的な行動』を先にさせることで、“やりたくない行動(義務的な行動)”が終わった後の報酬(正の強化)として“やりたい行動(自発的な行動)”が機能するという事である。
具体的な事例としては、『スイーツを食べるという高頻度行動』の前に『5キロのランニングをするという低頻度行動』を持ってきて、5キロの距離を走り終えればスイーツが食べられるという条件づけをすると、スイーツの報酬がない時よりもつらいランニングの行動が生起しやすくなるといった事がある。『オンラインゲームをするという高頻度行動』の前に『苦手科目の勉強をするという低頻度行動』を課題的にさせることで、その子どもは何とかして勉強や宿題をやり終えようとするモチベーションが高まりやすくなり、勉強をした後の報酬としてゲームが機能するのである。
プレマックの原理による行動制御の限界・問題点は、『高頻度行動(好きなこと)の報酬性・刺激性』が強すぎてそちらばかりに注意・関心が向かいやすくなり、先に終わらせるべき『低頻度行動(嫌いなこと)の課題性・義務意識』を達成しづらくなるという事にあるが、その問題点を和らげるためには『高頻度行動の刺激を弱めること・低頻度行動の目標水準を引き下げること』などの工夫が必要になってくる。

