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2006年12月03日

[ウィルヘルム・ライヒの性格の鎧(character armor)と性格分析]

ウィルヘルム・ライヒの性格の鎧(character armor)と性格分析

ライヒの精神分析分野における最大の功績は、独自の性格形成理論と精神発達理論に基づく『性格分析』の考案である。ライヒの性格分析の理論と技法の発見によって、精神分析の性格理論の臨床的な有効性が補強され、『個人の性格反応パターン』が果たす防衛的な役割が明らかにされた。『性格分析』とは、患者の性格形成過程や性格反応パターンを分析することによって、神経症の原因となっている『性格的な過剰防衛(過剰適応)』を改善しようとするものである。

ライヒは、自己の自然な欲求やありのままの感情を抑圧して、他者の欲求や気持ちに過剰に配慮している柔軟性を欠いた性格反応パターンを『性格の鎧(character armor)』と呼んだ。外部社会や他者との人間関係に適応する為の性格が過剰適応(過剰防衛)を起こしてしまい、自分の自然な欲求や素直な感情を閉じ込めてしまっている状態が『性格の鎧』である。マルクス主義の文脈で『人間の性格の鎧』を解釈すると、現代資本主義社会に適応する為にまとわなければならない『性格の鎧』は社会からの自己疎外を強化する権力装置となる。

現代社会では、『社会・他者・企業・家族』に適応して生存を維持する為に、本当の自分の気持ちを抑圧して自然な欲求のあり方を否定しなければならない。この当たり前と思われている現実原則が、人間の苦痛な精神症状を生み出し他者と共感し合えない絶望的な疎外感の原因となっている。

資本主義社会の下では、人間の精神的な自由は完全に剥奪されて、ありのままの自己と他者から疎外されてしまうことで、「過剰適応による心身症」や「抑圧による神経症」を発症しやすくなってしまう。ライヒは、本能的な欲求の相互承認と性格の鎧の破壊による理想社会を建設しなければならないという革命思想へ傾倒していった。

本質的な神経症治療を促進する為には、本当の気持ちを覆い隠してしまう『性格の鎧』を打ち壊す必要があるとライヒは言う。ライヒの精神分析技法に基づくと、生き生きとした喜びを実感できる感情生活を送り、ありのままの本能的欲求を充足できる人間関係を持つことが大切となる。社会への過剰適応や欲望の行き過ぎた抑制を解除する『主体的な自己変革』を行うことによってのみ、精神の健康と幸福な人生を手に入れられるのであり、無意識的欲求を言語化したり観念化するだけでは不十分だと考えたのである。

正統な精神科医(精神分析家)としての名声を失い、ラディカルな革命家としての可能性も閉ざされたライヒは、1930年代にオカルト(非科学的)な雰囲気に満ちたオーゴン・エネルギー(orgone energy)の存在を信じ始める。オーゴン(オルゴン)とは、性的な絶頂であるオルガスムス(orgasums)から着想した造語であり、性的欲動であり生のエネルギーでもあるリビドー(libido)を外在化させたような架空のエネルギー概念である。

オーゴン・エネルギーとは、人間の心身の健康や生命活動に影響を与える『宇宙の根源的エネルギー』のことである。ライヒは、万病を治癒できるオーゴン・エネルギーの活性化と充足を重視するだけでなく、心身医学的な心身相互作用のアイデアに基づいて、生命活動を強化する呼吸法やマッサージ、ボディ・ワークなどを開発した。身体の改善を通して精神を治療するという心身医学的な発想の起点としてライヒアン・セラピーを考えることも出来る。

しかし、人生の晩年のウィルヘルム・ライヒは不安定な精神状態にあったので、科学的なエビデンスを重視した精神医学研究に戻ることは出来なかった。オーゴン・エネルギーを前提とするオカルティックなライヒの心理療法は、現代でいえば、レイキや手かざし療法、心霊治療、スピリチュアル・カウンセリングなどに類似した超自然的・超能力的なセラピーである。



posted by ESDV Words Labo at 08:52 | TrackBack(0) | う:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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