オスグット・シュラッテル病(Osgood-Schlatter disease)
外科医のR.オスグットとC.シュラッテルによって1903年に命名された筋骨格系の疼痛と腫脹を伴う疾患を『オスグット・シュラッテル病(Osgood-Schlatter disease)』という。オスグット・シュラッテル病は12‐15歳の成長期の男子に発症しやすい病気で、膝下の軟骨や脛骨の組織に疼痛や腫れの症状が出てくるが、女子には極めて稀な疾患とされている。成長期を越えて膝周辺の組織や筋肉に痛みが走り、日常的に激しいジャンプ運動(バスケットやバレー)などをしているスポーツマンの場合には『ジャンパー膝』が発症している可能性もある。
一番激しく疼痛が起こりやすい部位は、大腿四頭筋の強力な牽引力が作用する『膝蓋靱帯の付着部位』であり、『膝周辺の頸骨の骨突出部(頸骨粗面)』が特に強く痛むことがある。膝頭の少し下の骨が盛り上がってきて周辺の組織が腫れてきたり、膝周りの筋肉に鋭い疼痛を感じることで症状の発症に気づくことが多い。
身体医学の病理学的な分類では、オスグット・シュラッテル病は特発性骨壊死(idiopathic osteonecrosis)の牽引型に分類される疾患だが、同じカテゴリーに分類される病気に踵骨(しょうこつ)の骨軟膜炎であるセーバー病(Sever disease)がある。セーバー病は、オスグット・シュラッテル病よりも好発年齢が低く8-12歳の男子が発症しやすい病気であるが、どちらの病気も、両方の踵や膝というように両側性の症状が見られやすいことが共通している。
骨端線閉鎖以前に過激な運動をすることによって、強い圧力が踵にかかり発症するが、セーバー病が発症すると踵の痛みがあるために運動の抑制が起こり、つま先立ちでそろそろと歩く傾向が見られる。セーバー病は、踵骨にかかる負荷を軽減しながら、アキレスの伸張訓練を行うことで疼痛が若干緩和することがあるが、特別な加療を行わなくても無理な運動を続けなければ、成長期の終わりと共に自然寛解していく病気である。
オスグット・シュラッテル病の症状形成機序は、成長期に見られる骨の急速な成長スピードに、膝周辺の筋肉の発達や脛骨粗面(けいこつそめん)の腱の成長が遅れてしまうことにある。つまり、『骨の成長』に対して『筋肉や腱の成長』が遅れることでアンバランスな筋骨格構造になってしまい、そのアンバランスな『成長期の筋骨格系』に過剰な運動の負荷(無理な圧力)が加わることで、オスグット・シュラッテル病の症状が発症する。
オスグット・シュラッテル病は、膝関節解離性骨軟膜炎になると膝に大きなダメージを受ける恐れもあるが、多くの場合は膝周辺に負担の掛かる運動制限(運動中止)をして、対症療法的な冷湿布や温熱療法をすることで若干、疼痛や腫れは緩和される。また、大腿四頭筋の伸展障害を改善する為に、無理をしないストレッチ運動をする運動療法的な対応も効果的とされている。根本的な原因は、12−13歳にピークに達する骨の成長速度と13−15歳でピークに達する筋肉と腱の成長速度のズレ(違い)にあるので、骨の成長が終了して骨端線が閉じれば、自然に疼痛や腫れが軽快していって治癒してしまうことが多いが、稀に成人してから後も膝周辺や脛周りの疼痛が後遺症として残る人がいる。
オスグット・シュラッテル病に対する医学治療の中心は「物理療法」であり、具体的には、消炎作用(抗炎症作用)や免疫力の強化作用を持つ西洋医学のレーザー治療や効果的な経絡(ツボ)を刺激する東洋医学(中医学)の鍼治療などが行われる。病院で適切な診療やアドバイスをして貰う場合には、通常、整形外科か外科、リハビリ科の専門医を訪ねて相談してみると良い。