フリースクール(free school)とオルタナティブ教育(alternative education):5
日本ではフリースクールというと、学校に適応できなくなった不登校・ひきこもり・中退者の子どもの受け皿として機能しているイメージが強く、『継続的な学習権の保障・安心して過ごせる居場所の提供・高卒認定試験や資格試験の合格支援・通信制高校のサポート学習』が主要な教育目標になっているが、フリースクールが発祥した欧米ではむしろ自由で個性的かつ独創的な教育内容に工夫を凝らした『オルタナティブスクール(自主的に選択して通う学校)』としての認識のほうが強くなっている。
フリースクールは学校教育法1条で定める学校(=1条校)ではないので、学歴上の卒業資格としては認定されない学校が殆どであるが、1992年からは在籍する学校の校長の裁量によって、『フリースクール等の民間施設(学習カリキュラム・時間割などに関して一定の条件あり)』に通った期間を、学習指導要録上で出席扱いにすることができるようになってきている。フリースクールの対象年齢は、初めは義務教育段階にある小中学生の子どもだったが、近年では高校生以上の年齢にも拡大されており、『フリースクールを通した生涯学習』というコンセプトも提唱されたりしている。フリースクールの自由主義・自主性・責任感の精神を応用した大学として、東京シューレが母体になり20〜30代の若者が通うことを想定した『シューレ大学』が1999年に設立されている。
A.S.ニイルの自由主義的な教育思想から始まる『欧米社会におけるフリースクールの誕生と増加』は、アメリカの黒人公民権運動や反戦思想・反核運動と相関していた時代が長く、日本の不登校・ひきこもり・中退者の学習権の保障を目的にしたフリースクールとは歴史的な経緯がかなり異なっている。欧米社会のフリースクールの活動内容と思想性、歴史性は、自由民主主義社会を構成する自由・平等で責任感のある個人を育成するという『デモクラティック・スクール』の教育理念と切り離して考えることはできない。
教育分野に関連する思想を展開したジョン・ホルト、イヴァン・イリイチ、ポール・グッドマン、フレデリック・マイヤー、ジョージ・デンソンといった哲学者・社会評論家たちは、『権威化・慣例化している既存の学校教育システム』は若者・生徒の見識や価値観を画一的な型にはめ込む以上の効果を持っていないとして、民主主義国家を進歩発展させるための手段としてのフリースクール(オルタナティブ教育)を肯定する主張をした。
ヨーロッパの新教育運動の流れを汲むフリースクールとしては、フレネ学校、シュタイナー学校、デンマークの生涯学習拠点であるフォルケホイスコーレなどが知られている。アメリカのフリースクールの形態としては、教科学習・知識・倫理などの家庭教育の範疇を拡大して子どもを学校に通学させなくても良いとする『ホームスクーリング(home schooling)』や公募型民間運営学校の『チャーター・スクール(Charter School)』なども注目されている。
この記事の内容は、『フリースクール(free school)とデモクラティック・スクール:4』の項目の続きになっています。

