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2012年11月24日

[ジョン・H・ウィークランド(John H. Weakland)]

ジョン・H・ウィークランド(John H. Weakland)

ジョン・H・ウィークランド(John H. Weakland, 1919-1995)は、カリフォルニア州パロアルトにあるMRI(Mental Research Institute)の創設メンバーの一人であり、長年にわたってMRIの実質的な所長を務めた履歴を持つ。MRIは家族療法と短期療法の中心的な研究機関として知られるが、家族を一つのシステムと見なす立場から、『家族相互のコミュニケーションとその影響』を分析して改善することに注力した。

アメリカの家族療法研究の代表的な拠点は、東海岸にある『アッカーマン研究所,アッカーマングループ』と西海岸にある『MRI(Mental Research Institute),パロアルトグループ』であるが、アッカーマン研究所はネイサン・アッカーマンの死後にその後継者が設立したものである。MRIのほうは、D.D.ジャクソンやジョン・H・ウィークランド、J.ヘイリーなどの複数の家族療法家が協力して立ち上げたという歴史的経緯があり、その家族システム理論や家族療法の具体的な技法も『折衷的・融合的』という特徴を持っている。

MRIのシステム論に基づく家族療法の目的は、家族構成員の相互作用(コミュニケーション)のあり方と影響を分析して改善することであり、短期療法の長所と家族療法の技法を融合させる事だった。MRIの家族療法は、グレゴリー・ベイトソンやジョン・H・ウィークランドらが発見した『ダブルバインド理論(二重拘束理論)』と催眠療法家のミルトン・エリクソンが提起した『短期療法(Brief Therapy)』の影響を強く受けており、家族間の問題や悩みをできるだけ短期間で効果的に解決することを目標にしている。

ジョン・H・ウィークランドは、マーガレット・ミードやルース・ベネディクトから教えを受けた元文化人類学者としてのキャリアも持っており、家族療法家の心理学者に転向する前にはアジアの歴史研究や中国の文化研究を行っていた。そういった文化人類学の興味関心や研究活動の影響もあるのか、ウィークランドの妻は芸術家をしている中国人であった。

ウィークランドはグレゴリー・ベイトソンとの共同研究で、両親とのコミュニケーションにおけるダブルバインド(二重拘束)が統合失調症の原因であるとする仮説を発表したが、現在の精神医学ではこの病因仮説は否定されている。親の発言によって生まれるダブルバインド状況というのは、言葉では『もう怒っていないよ』という一次的メッセージを出していても、それと同時に表情・態度では『イライラしている(目つきが鋭い・とげとげしい身振りなど)』という二次的メッセージを出しているような状況であり、子どもが『親の本当の感情・意図』が分からなくなり心理的に混乱・動揺してしまうのである。

パロアルトグループ(MRI)とアッカーマングループは、共同で『ファミリー・プロセス(Family Process)』という専門機関誌を発刊しており、MRIは『コミュニケーション派』と呼ばれ、アッカーマングループは『精神力動派(精神分析派)』と呼ばれている。ウィークランド自身は『短期療法(Brief Therapy, 1974)』という著作の内容と実践を重要視しており、精神分析療法よりも短期間で効果的に家族問題を解決するためのアイデアや技法を開発することに熱意を注いでいた。

MRIの家族療法の基盤となる3本柱は、『システム理論・コミュニケーション理論・システムズアプローチ』とされており、J.H.ウィークランドやJ.ヘイリーらの後の世代でも、V.サティアやP.ワツラウィック、A.ボーデン、R.フィッシュといった著名な家族療法家が続々と輩出されることになった。

posted by ESDV Words Labo at 04:04 | TrackBack(0) | う:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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