ウェブとブログの検索

カスタム検索





2006年12月28日

[家族療法の下位システム(subsystem)・上位集団と下位集団(subgroup)]

家族療法の下位システム(subsystem)

家族療法とは、複数の個人(要素)が集まっている家族システムを対象にして実施する心理療法である。ひきこもりや家庭内暴力、依存症(嗜癖)など問題行動を呈している一人の家族だけを病人(異常)と見なすのではなく、相互作用する家族構成員それぞれのコミュニケーションを改善することで、家族というシステムに『正のフィードバック』をかけていくのである。精神病理を持つ個人を治療するのではなく、個人が相互に影響を与え合う家族というシステムを改善しようとすることから、家族療法はシステムズ・アプローチ(systems approach)としての特徴を非常に強く持っている。

例えば、ドメスティック・バイオレンス(DV)のカウンセリングでは、不当な暴力を振るう男性の妄想的な嫉妬心や異常な執着心、ストレス耐性の低さ、自己中心的な価値観などに焦点が合わせられやすいが、システムズ・アプローチの家族療法を適用してドメスティック・バイオレンスに対処する場合には、『夫(父親)・妻(母親)・子どもの対人関係のパターン』を分析して有効な介入をすることが重要になってくる。要素(家族構成員)が相互作用してフィードバックを及ぼし合うことで、最終的な結果としての『暴力・和解・協調・尊敬』などの行動が生まれてくるので、家族成員それぞれのコミュニケーションや反応の仕方を調整することが『家族療法の改善効果』につながる。

コミュニケーションの作用やパターン化した家族間の人間関係が、『部分の総和ではない全体としての結果』を生み出す。このように家族を相互に影響を与え合うシステムと解釈する理論を『家族システム理論』というが、家族システム理論はオーストリアの理論生物学者ルートヴィッヒ・フォン・ベルタランフィの一般システム理論を下敷きにしている。

自然科学的な要素還元主義では説明できない全体としての反応を生み出す家族システム(一般システム)は、上位システムから下位システム(subsystem)まで複数の階層を持っている。マクロな上位システムは、ミクロな下位システム(subsystem)の機能単位によってその有効性と機能性を発揮することが出来るが、下位システムは飽くまで独立的な機能単位であって上位システムの単なる構成要素ではない。家族療法の対象となる家族システムにも、下位システムとして「父親・母親・祖父母」「夫・妻」「夫・長男」「妻・長男」「祖父母・長男」「夫・妻・長男」などの独立的な機能単位の組み合わせを考えることが出来る。

上位集団と下位集団(subgroup)

国際社会という最大の上位集団に国家という下位集団が属し、国家という上位集団に官公庁・民間企業・非営利団体・宗教法人・学校法人・不法集団・移民集団・難民集団・家族という下位集団が属している。ある一定以上の規模を持つ集団は「上位集団」となり、上位集団の下部には一般システム理論の「下位システム」と同様に独自の構造と機能を持つ「下部集団」が形成されることになる。

巨大な上位集団は、その内部と下部に複数の分化した『機能的・依存的・個性的な下位集団』を抱え込むようになるが、多くの場合、上位集団と下位集団の関係は『支配‐従属関係』のように優劣や上下があるものではない。下位集団と上位集団の関係は、『全体に対する独立的な部分の関係』であり、下位集団であっても一定以上の構成員があれば、更に下位の集団を抱え込む上位集団となることがある。

下位集団は必ずしも上位集団の目的達成に貢献するわけではなく、上位集団の意向や統制に反発することもあるので、システム全体が正常に機能し続けるためには上位集団と下位集団の利害関係を絶えず調整していく必要がある。アメリカ合衆国のような多民族・多宗教・多文化の国家の場合には、下位システムとして利害が激しく対立する下位集団(エスニシティグループ・マイノリティグループ・マジョリティグループ・圧力団体・市民団体・富裕層・貧困層)を数多く持っており、政治的な判断と法律・制度によってそれらの下位集団の利害を調整していくことは相当に難しい作業である。国益が確保されていて治安の良い国家というのは、相互に権利や利益を対立させている下位集団それぞれの思惑を、ある程度十分に満たすことに成功している国家のことである。



posted by ESDV Words Labo at 23:16 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。