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2013年01月07日

[ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)と行動療法・系統的脱感作法]

ジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)と行動療法・系統的脱感作法

南アフリカ共和国の精神科医であるジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe, 1915-1998)は、行動主義心理学において精力的に『行動療法(behavioural therapy)』を実践したサイコセラピストとして知られている。ジョセフ・ウォルピは薬物療法を前提とする精神科医からそのキャリアを歩き始めたが、その途中で精神分析の創始者であるジークムント・フロイト『無意識の意識化の理論・対話を用いた神経症の治療法』に強い感銘を受けて精神分析家を志した。

第二次世界大戦の最中の1944年、J.ウォルピは軍医としてイギリス軍に従軍したが、ウォルピはその戦場で残酷な戦いや砲撃のショック、死の恐怖、殺傷の罪悪感で『神経症症状(麻痺・けいれん・激しい恐怖・大量発汗・睡眠障害・心因性の失語や失明)』を発症した兵士たちを多く見ることになる。これらの戦争のトラウマ(心理的なショック・恐怖・罪悪感)によって発症する神経症を当時は『戦争神経症』と呼んだ。ジョセフ・ウォルピは戦争神経症の診察と治療を経験する中で、S.フロイトの精神分析の効果に疑問を持つようになり、より確固とした効果と理論を持つ心理療法を追い求める事になる。

戦争に軍医として従軍していたウォルピは、文化人類学者のB.K.マリノフスキーや心理学者のC.W.ヴァレンタイン『乳幼児期の心理学』などに理論的な影響を受けるようになる。次第に、I.P.パヴロフの科学的実験を伴う『レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)』に引きつけられるようになり、刺激に対する反応という『S-R結合』を応用したC.L.ハルやB.F.スキナーの行動療法を実施するようになっていった。

無意識やリビドー、エス、超自我、防衛機制などをはじめとする精神分析の理論的概念の多くは、客観的に観察することができない『想像・仮定された操作的概念』に過ぎないとの思いが、ジョセフ・ウォルピを精神分析から引き離していくことになった。J.ウォルピが戦争神経症の治療経験を通して追い求めるようになったのは、『客観的実体・科学的根拠・臨床的有効性のある心理療法(カウンセリング技法)』であり、ウォルピが最終的に行き着いたのが客観的に観察可能な『行動の経過・変容』を取り扱う行動療法(behavioural therapy)だったのである。

ジョセフ・ウォルピは神経症の発症と治療に関する動物実験的なモデルの確立にも注力して、1947年からネコを用いた人為的な条件づけを用いた神経症形成実験を行った。強烈な恐怖・不安の刺激を与え続けることでネコに神経症を形成させたり、その形成した神経症症状を行動療法の新たな条件づけの学習で治療したりしたが、こういった『実験神経症の研究』によってウォルピは科学的かつ実証的な心理療法を完成させようとした。

1956年になるとアメリカ合衆国へと渡って、『逆制止による心理療法(Psychotherapy by Reciprocal Inhibition, 1958, 邦訳は1977)』『行動療法の実際(The Practice of Behavior Therapy, 1969)』『神経症の行動療法(1969)』などの主要な著作論文を書き上げるだけでなく、『系統的脱感作法(段階的な暴露療法)』をはじめとする効果的な行動療法を開発することで心理療法全体の発展に貢献した。

『逆制止』というのは、不安や恐怖の感情を抑えるために、その感情と拮抗する反応(筋弛緩・ゆったりした呼吸のリラックス状態)を習得させることであり、逆制止を実施することによって神経症の各種症状が緩和されることになる。ジョセフ・ウォルピの最大の功績とされるのは逆制止とエクスポージャー法(暴露療法)を組み合わせた『系統的脱感作法(systematic desensitization)』の考案とされる。系統的脱感作法では弱い不安を感じる状況から強い不安を感じる状況までを記録した『不安階層表』をまず作成して、一番弱い不安を感じる状況から順番に体験して、段階的により強い不安状況に直面させその刺激に慣れさせていくという技法である。

具体的な系統的脱感作法やフラッディング法の説明については、『行動療法(曝露療法・エクスポージャー)の技法としてのインプロージョン療法』の項目も参考にしてみて下さい。



posted by ESDV Words Labo at 08:22 | TrackBack(0) | う:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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