G.W.オルポート(Gordon Willard Allport)
G.W.オルポート(Gordon Willard Allport,1897‐1967)は、『特性論(特性因子論)』を前提とするパーソナリティ心理学(人格心理学)の分野で活躍したアメリカの心理学者である。個人のパーソナリティ(人格構造)における『優勢な特性』の抽出に関心を持ち、個人のパーソナリティを因子分析の手法によっていくつかの特性(性格特性)に分類して理解しようとした。
G.W.オルポートの兄であるフロイド・ヘンリー・オルポート(Floyd Henry Allport, 1890-1978)も心理学者である。G.W.オルポートは1919年にハーバード大学を卒業して、1921年にMA(Master of Arts:学術修士号)の学位を取得、1922年にPh.D.(Philosophy of Doctor:学術博士号)の学位を取得している。G.W.オルポートはアメリカの心理学者であるが、ドイツのベルリン大学やハンブルク大学、イギリスのケンブリッジ大学にも留学している。
1937年に主要論文となる人格心理学をテーマにした“Personality”を発表して、1947年には社会心理学分野の著書の『デマの心理学(1952年)』という邦訳書でも知られる“Psychology of Rumor”を書いている。G.W.オルポートは、人格(パーソナリティ)は他者と相互作用する社会生活によって段階的に形成されると考えており、人格を外部と関わりあう『自己内包的な全体性』と定義していた。1942年以降は、ハーバード大学の教授の職務を勤めていた。
人格心理学(性格心理学)分野の黎明期を担った心理学者がG.W.オルポートであるが、その研究方法は科学主義的な実験・事実記述を重視するものであり、S.フロイトの精神分析における『(目に見えず実験することもできない)無意識の領域・働き』については極めて懐疑的な態度を示していた。1950年には、宗教心理学の歴史的著作である“The Individual and his Religion(1950年)”(『個人と宗教,1953年』)を発表している。
G.W.オルポートのいう人格・性格の『特性』とは、その個人に一貫性のある特徴的な行動を取らせる原因のことである。特性は個人の行動と環境の間に存在して『媒介変数』として機能しているので、特性を正しく理解することでその個人の行動や問題を予測しやすくなるのである。
オルポートは、複数の人が共通して持っている『共通特性』とその個人だけが持っている特異的な『個人特性』とを分類して、人間の複雑なパーソナリティを理解しようとした。G.W.オルポートの特性論を因子分析の手法を用いて、より精度が高いものへと改良したのがR.B.キャッテル(R.B.Cattell, 1905-1998)である。