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2013年02月13日

[ミルトン・エリクソン(Milton H. Erickson):4]

ミルトン・エリクソン(Milton H. Erickson):4

M.エリクソンは、クライアント(他者)の首筋の動きだけを見ることでその人の脈拍数を数える事ができたり、骨格・鼻の高さの変化を見るだけで女性が妊娠しているか否かを的確に言い当てられるという経験に裏付けられた特殊技能とも言える『驚異的な人間観察力』も持っていた。先天的障害である『失音楽症』についても、エリクソンは音楽的な旋律(メロディ)を無視して純粋に音を聞くことができたので、『クライアントの呼吸・音声の抑揚』にだけ意識的な注意を強く向ける事ができるようになった。

先天性の身体障害やポリオの後遺症といったハンディキャップを、ミルトン・エリクソンは逆に『驚異的かつ超人的な人間観察力』に転換させることに成功したのであり、こういった並外れた他者の観察力と心理・動機の理解力によってエリクソンの『催眠』は独創的な名人芸(彼一代限りの秘技)と呼ばれる域にまで高められたのである。

M.エリクソンは独学で習得した催眠(催眠療法)を、大学時代に延べ2000人以上に実験的に試行することでその有効性を高めたが、エリクソンの開発した催眠は『コミュニケーションの一種』であり、特別な『催眠誘導(意識水準の低下)の手順』を踏んだ技法とは異なるオリジナルなものである。

古典的催眠ではクライアントの筋肉を強く緊張させてから弛緩させる動作をさせたり、指示に従う特別な呼吸をさせたりしながら、段階的にクライアントを『変性意識状態(トランス状態)』へと言語的暗示を用いて誘導していくが、エリクソン催眠では一般的な会話をしている内に、いつの間にかクライアントが『治療的・問題解決的な催眠状態(変性意識状態)』に誘い込まれているような形になってしまうのである。

M.エリクソンの催眠の技法は、理論化したり標準化したりする事が難しく、クライアントのニーズや心理状態に合わせて臨機応変(自由自在)に変化するものであったが、そこに共通するのは『クライアントの利益になることを何でも試す(問題解決志向のカウンセリング)』『催眠はコミュニケーションである(特別な暗示や誘導を必要とするものではない)』というものであった。エリクソンは催眠によってクライアントの言動を誘導したり意識を変性させたりすることには興味を持っておらず、催眠を用いてどのようにクライアントの利益や治癒を高めていくかという『催眠のユーティライゼーション(Utilization)』に集中していたのである。

この記事の内容は、『ミルトン・エリクソン:3』の続きになっています。



posted by ESDV Words Labo at 01:14 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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