アルバート・エリス(Albert Ellis):4
論理情動行動療法(論理療法)を学ぶために適した邦訳書としては以下のようなものがあるが、A.エリスは生涯において600〜700にも上る学術論文を書いており、著作数も50冊を超えるという多作の臨床心理学者だった。
1. アルバート・エリス(著),国分康孝 (訳), 国分久子 (訳), 石隈利紀 (訳), 『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには―論理療法のすすめ』,川島書店
2.アルバート・エリス(著),斎藤勇(訳)『性格は変えられない、それでも人生は変えられる―エリス博士のセルフ・セラピー』,ダイヤモンド社
3.アルバート・エリス(著),本明寛・野口京子(訳),『ブリーフ・セラピー 理性感情行動療法のアプローチ』, 金子書房
4.アルバート・エリス(著),野口京子(訳)『理性感情行動療法』,金子書房
1982年にアメリカ心理学会(APA)が実施した『20世紀に最も大きな影響を与えた心理療法家』で“カウンセリングの神様”であるカール・ロジャーズに続いて、アルバート・エリスは2位に選出されている。エリスは非常に膨大な論文を書き残したため、1957年以降の数十年にわたって臨床心理学・カウンセリング心理学の分野で、論文に引用される頻度が最も大きかったとされる。
アルバート・エリスは、1913年にペンシルベニア州のピッツバーグで誕生してニューヨークで少年時代を過ごし、1934年にニューヨーク市立大学を卒業している。1943年にコロンビア大学で臨床心理学の修士号を取得して、1947年には同大学で博士号を取得している。
その後は、社会・文化的要因や共感性の影響を重視した女性精神分析家であるカレン・ホーナイに師事して3年間にわたって教育分析(スーパーバイジング)を受けた。暫くは精神分析家としてクライアントの治療に携わったが、精神分析の効果の弱さと治療期間の長さに失望して、1953年までに精神分析によるクライアントの治療を放棄している。
1955年に合理的な信念への文章記述の書き換えによって心身症状を改善させようとする『論理療法(Rational Therapy)』を考案し、1962年に『論理情動療法・理性感情療法(Rational-Emotive Therapy:RET)』へと名称を変更している。更に1995年になると、論理情動療法に行動療法の視点を付け加えて総合的な『論理情動行動療法・理性感情行動療法(Rational Emotive Behavior Therapy:REBT』へと名称を変更することになった。
しかし、名称を変わっても心理療法としての技法や理論の本質は変わっていないので、現在でもアルバート・エリスの考案した心理療法は『論理療法(RT)』という簡潔で分かりやすい名前のほうで呼ばれることも多い。1987年には中村弘道が理事長を務めていた『日本学生相談学会』の招聘を受けて、初来日を果たしている。A.エリスは93歳の長寿をまっとうしたが、2007年に心臓・腎臓などの多臓器不全(老衰に伴うもの)のため、ニューヨーク市マンハッタンの自宅で死去することとなった。
この記事の内容は、『アルバート・エリス(Albert Ellis):3』の続きになっています。