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2007年02月23日

[交流分析(Transactional Analysis)の「儀式(ritual)」と「ストローク(stroke)」]

交流分析(Transactional Analysis)の「儀式(ritual)」と「ストローク(stroke)」

アメリカの精神科医エリック・バーン(1910-1970)が創始した「精神分析の口語訳」とも言われる交流分析(Transactional Analysis)の理論・技法についてはこの用語集でも何度か説明してきた。エリック・バーンは、S.フロイトの弟子で社会的精神発達理論(ライフサイクル論)を考案したE.H.エリクソン教育分析(スーパービジョン)を受けたが、エリック・バーンの弟子には、交流分析理論に基づく性格テストのエゴグラム(egogram)を開発したジョン・デュセイ(J.M.Dusay)がいる。

交流分析のエゴグラムでは、『CP(批判的な親)・NP(擁護的な親)・A(大人)・FC(自由な子ども)・AC(適応的な子ども)』の5つの自我状態を仮定して、個人の性格と対人関係のパターンを分析するが、対人関係(コミュニケーション)を分析するやり取り分析(交流分析)では「ストローク(stroke)」が重視される。ストローク(stroke)の原義は、優しく撫でたりさすったりする「愛撫」であるが、交流分析でいうストロークとは相手の存在や価値を肯定したり否定したりする「感情的・情緒的な刺激」のことである。

ストロークには、『言語的なストローク』『非言語的なストローク』があり、ボキャブラリ(語彙)が少なく言語機能の発達が未熟な幼児期の段階では、スキンシップや見つめあい、微笑み、握手などの非言語的なストロークが人格の成長に与える影響が大きい。交流分析におけるコミュニケーション(やり取り)とは、相手の存在や価値を認めたり否定したりする『ストローク』のやり取りをすることであり、ストロークには相手の価値を肯定する『肯定的なストローク(プラスのストローク)』と相手の価値を否定する『否定的なストローク(マイナスのストローク)』がある。

B.F.スキナーのオペラント条件づけで考えると、肯定的なストロークはその行動の生起頻度を上げる『正の強化子』としての機能をもち、否定的なストロークはその行動の生起頻度を下げる『負の強化子』としての機能をもっている。

人生において自分の基本的な行動パターンや価値観、人間関係を規定する『人生脚本(Life Script)』については既に説明したが、交流分析理論を元にした交流(コミュニケーション)の種類には『ゲーム・儀式・娯楽・仕事』など様々なものがある。ゲーム(game)とは、報酬となる感情であるラケットを獲得する為に行うパターン化(形式化)した交流であり、ゲームの交流には相補的・裏面的・予定調和的なものがある。『相手を思い通りにコントロールしよう』という意図を持ってゲームを行うと、お互いに不愉快な気持ちになることが多く、基本的に不適応な人間関係で見られるコミュニケーションのパターンである。

代表的なゲームの一つとして、『キック・ミー(Kick Me!)』と呼ばれる自虐的なゲームがあるが、これは、遅刻常習者やアルコール中毒者(物質嗜癖)、因縁をつける人、おせっかいな人、迷惑な人、独断的に強制してくる人に見られる交流パターンである。つまり、『私を攻撃してくれ(私を蹴って)』と言わんばかりに、相手の気持ちや立場を考えずに『相手の拒絶・怒り・反対』を誘う自分勝手な行動をパターン的に取る人のことをいう。『なぜ、あの人は、他人に嫌われるような馬鹿馬鹿しい行動ばかりをとって、その間違いを改めることができないのだろう?』と思わせる人は、キック・ミーの自虐的(自己破滅的)なゲームにはまり込んでいることがある。

キック・ミーのゲームをするようになる原因としては、乳幼児期の母子関係における愛情欲求の不足があり、それ以外にも、幼児期に劣等感を強めるような承認欲求の否定があるとキック・ミーのゲームを行いやすくなる。他人に不当に干渉して『他人の拒絶や怒り』を呼ぶことが多いが、キック・ミーを行う自虐的な人が求めているのは、母親から与えられるような『肯定的なストローク』であり、わがままや無茶をしても許してもらえる『他者の寛容』を期待しているのである。しかし、赤の他人は自分の母親のように無条件の愛情や寛容を与えてくれるわけではないので、キック・ミーを行う人の多くは慢性的なフラストレーション状態(欲求不満状態)に置かれることになる。

儀式(ritual)とは、慣習的・形式的に決まりきった言語(態度・表情)をやり取りすることで、お互いに肯定的なストロークを得ようとするものである。一般的に社交辞令や社会常識とされるコミュニケーションが『儀式』であり、典型的な儀式としては、冠婚葬祭で取り交わされるお祝いやお悔やみのメッセージのやり取りがある。日常的な人間関係で行われる『儀式』としては、『今日の調子はどうですか?』『おかげさまで元気でやっております』というやり取りや『はじめまして、よろしくお願いします』『こちらこそ、よろしくお願いします』というコミュニケーションを考えることができる。決まりきったパターンである儀式で交換されるストロークの総量は、通常の相互的なコミュニケーションで得られるストロークよりも少ない。

posted by ESDV Words Labo at 09:09 | TrackBack(0) | き:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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