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2013年03月17日

[ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)]

ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)

イギリスの精神分析家ハリー・ガントリップ(Harry Guntrip)は、メラニー・クラインが創設した英国対象関係学派に分類される臨床家であり、その理論構成はW.R.D.フェアバーンD.W.ウィニコットの影響を強く受けている。

W.R.D.フェアバーンの『スキゾイド(統合失調質・分裂病質)』の研究に影響を受けたH.ガントリップは、対象関係論(object relation theory)のスキーマと概念設定を用いて、スキゾイド(現在の統合失調症)の人の内的世界や病理形成の力動を解明しようとする仕事を行った。ガントリップの精神分析も、M.クラインと同様に発達早期の母子関係とその性格形成への影響を重視するものであった。特に、乳児が外的対象を自分の全能感が創り出したものだと思い込む『錯覚(illusion)』の心理機制と錯覚が持つ精神病理との関係について精力的な考察をしている。

母親の赤ちゃんに対する授乳行為は、『赤ちゃんの生存・空腹のニーズ』に適切に答えようとする行為だが、これは間接的に赤ちゃんの錯覚(自分が母親の乳房・母乳を作り出しているのだという錯覚)を利用するものでもある。外的対象(乳房)をあたかも自分が作り出しているように思い込む錯覚は、『個人の潜在的な創造力』であり、この潜在的な創造力によって生産的あるいは自滅的な『幻想(fantasy)』という心理機制が生まれてくることになる。

この錯覚(illusion)と幻想(fantasy)が病理的な方向性に発現してしまい、その錯覚と幻想を自力で修正することが不可能となった時に、ガントリップは統合失調症(旧精神分裂病)が発症すると仮定したのである。

ハリー・ガントリップの『対象関係論』をベースにしたスキゾイド(統合失調症者)の内的世界の分析は以下のようなものである。

1.スキゾイドの幻覚は、悪い対象を自分の一部にしてしまう『摂取(取り込み)』の防衛機制によって引き起こされる。

2.『孤立(疎外)の不安』と『呑み込まれる不安』との双方が葛藤している。

3.『現実世界』のストレスやトラウマに耐え切れずに、『幻想世界(良い対象との依存関係)』に逃避しようとしている。

4.スキゾイドの治療目標は、患者が治療者を『良い対象』として摂取(取り込み)し、『悪い対象』を内的世界から排除することにある。

5.逃避的・依存的なありのままの自己像を受容しつつも、『今とは違う自分(錯覚・幻想に依存しなくても良い自分)』に生まれ変わったという新たな感覚(希望あふれる感覚)を得ることが、スキゾイドの回復が進んできている証左となる。



posted by ESDV Words Labo at 01:18 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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