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2013年03月18日

[認知行動療法の飽和(satiation)]

認知行動療法の飽和(satiation)

飽和(satiation)は、それ以上に増える余地がないほどにいっぱいになることであり、ある前提条件においてそれ以上にもう増えることができないという上限値のことである。化学では溶解度(溶かすことができる限界)まで溶質が溶けている溶液の状態を飽和状態という。心理臨床で用いられる認知行動療法(認知療法)では、『刺激』に十分に慣れてしまって順応した状態、あるいはその刺激に対する反応が極めて弱くなっている状態のことを『飽和(satiation)』と呼んでいる。

認知行動療法における飽和は、単純に『刺激に対する飽き』として理解することもできる。クライエントが不安・恐怖を感じている行動や対象に対して、何度もイメージ(想像内容)や言語化(記憶の想起)で直面させていくことで、その不安な行動や恐れを感じる対象(状況)に対して、次第に反応が鈍くなっていく『飽和』の状態が発生するのである。

認知行動療法では『イメージ(想像内容)・言語化(記憶と認知)』を用いて不安な行動や恐怖を感じる対象に直面させていくが、行動療法では『実際の行動』を用いてそれらの不安・恐怖・緊張に直面させていくという違いがある。行動療法の中でも不安や恐怖、緊張を感じている対象(状況)に、直接的に直面していく技法のことを『暴露療法(エクスポージャー法)』といい、クライエントがその苦しいストレスに耐えることができれば大きな効果が期待できるやり方である。

暴露療法は『逆説療法(paradoxical therapy)』『インプロージョン療法(implosion therapy)』と呼ばれることもあるが、逆説療法では実際のカウンセリングの目的とは正反対の教示が与えられ、『悩んでいることや恐ろしいと思うことをずっと考え続けてください』という指示が行われる。この指示は、認知行動療法・行動療法の効果を短期間で発現させるために、意図的・技術的に『飽和(satiation)』を起こさせようとしているのである。どんなに不安な状況でもどれほど恐ろしい対象でも、毎日ずっと思い出したり考え続けたりしていれば次第に飽きてきて、『刺激に対する反応(不安・恐怖・緊張)』は飽和によって必然的に弱くなっていくことになる。

認知行動療法では特に強迫性障害の『強迫観念』の症状を軽減させるために、この飽和の心理メカニズムが利用されることが多く、自分が不快に感じている強迫観念のイメージを集中的に思い浮かべることで、飽和を起こしてその不快・苦痛を弱めることを目指す。強迫観念や精神症状、苦痛な記憶(トラウマ)、激しい感情に対する『執着(とらわれ)』を技術的に弱めていくために、『飽和(satiation)』の心理状態の応用は有効であり、認知行動療法・行動療法の分野では頻繁にこの飽和の心理メカニズムが利用されている。



posted by ESDV Words Labo at 18:24 | TrackBack(0) | ほ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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