ウェブとブログの検索

カスタム検索





2007年02月28日

[脳卒中(脳血管障害)とくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)]

脳卒中(脳血管障害)とくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)

頭蓋骨に覆われた人間の脳は、外側から『硬膜・くも膜・軟膜』の三層の膜によって保護されている。くも膜と軟膜の間の空間(くも膜と脳器官の間の空間)を「くも膜下」と呼ぶが、くも膜下には脳に酸素と栄養を送るための比較的太い血管(栄養血管)が多く走っている。脳の栄養血管に病的な変化が起きて、何らかの障害や症状が発生する病気をまとめて『脳卒中』というが、『脳卒中・悪性新生物(がん)・心疾患』は日本人の三大死因疾患としてよく知られている。

脳血管障害である脳卒中に分類される疾患には『くも膜下出血・脳梗塞・脳内出血』があるが、エビデンス(科学的根拠)のある脳卒中のリスクファクター(危険因子)としては『高血圧症・高脂血症・糖尿病・過度の喫煙や飲酒・心臓疾患・動脈硬化』が知られているが、特に高血圧との因果関係が深い。くも膜下出血とは文字通り、くも膜下にある栄養血管が損傷して切れる病気であるが、脳内部の血管が切れる脳内出血よりも運動・感覚系の障害がでにくい。

くも膜下出血の発症の特徴は、『典型的な脳卒中の発作』を示すことであり、今まで体験したことのないような極度の激しい頭痛に襲われることが多い。激しい頭痛を訴えて頭を抱え込んだり、そのまま意識が遠のいて失神してしまうケースなども見られるが、これは、くも膜に痛覚に対応した知覚神経が通っているからである。

くも膜下出血は、多くの場合、くも膜下に存在する『脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)』という脳栄養血管の分岐点にできた瘤(りゅう=こぶ)が破裂することによって発症する。くも膜下出血が起こると、くも膜下を満たす脳脊髄液に血液が混入するので、CTスキャンで分かり難い軽微な症状の場合には、腰部への注射によって脳脊髄液を採取し『血液の混入の有無』を確認する。

くも膜下出血やその原因となる脳動脈瘤の診断を正確に行う場合の検査には、3次元のCTスキャン(コンピュータ画像診断法)やMRI(核磁気共鳴画像診断法)、カテーテルを用いた血管撮影法が実施される。くも膜下出血の発症年齢は中高年が多いが、脳内出血や脳梗塞と比較すると若年層で突然発症してその場に倒れこむ症例が多い。脳血管障害(脳卒中)全体の2割程度をくも膜下出血が占めている。

脳内出血(脳内部の血管が破れる病気)や脳梗塞(脳の血管がつまって脳器官が壊死する病気)では、半側麻痺や感覚障害などの感覚・運動系の障害がでやすいが、くも膜下出血と違って『激しい痛み』を感じる事が少なく、自分が脳卒中を起こしているという自覚症状を伴わないことが多い。その理由は、脳内出血や脳梗塞では脳器官そのものが破壊されたり壊死を起こしたりして、身体の運動機能や知覚機能が障害されやすいからである。

くも膜下出血は脳の内部ではなく外側での出血なので、比較的、脳そのものの機能が破壊されることが少ない。感覚・運動・言語系の障害(麻痺)が後遺症として残る危険性は小さいといえるが、致死率が初回発作時で3割近くあるので、必ずしも安心できる病気ではない。脳卒中から回復した場合に最も懸念されるのは、運動障害や感覚障害、言語障害が後遺症として残ることであるが、それらを回避する為には、脳動脈瘤の早期発見・早期治療がとても重要になってくる。

最近は、脳動脈瘤の破裂を防ぐクリッピング法などの手術技法が発達してきており、脳外科学全体の手技・設備の進歩も著しいので、脳卒中の予後はかなり良くなってきている。言語障害や身体麻痺などの後遺症に対処するリハビリテーション医学や理学療法も進展を見せており、日常生活に支障がなく身辺自立が可能なレベルまで回復する症例も少なくない。

ラベル:医学
posted by ESDV Words Labo at 23:43 | TrackBack(0) | く:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック