クラミジア感染症(chlamidia)とトラコーマ
クラミジア感染症は日本で最も発症者数の多い性感染症(STD)となっており、特に16〜25歳の若年齢層の女性において性器クラミジアの増加傾向が見られる。クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌(病原微生物)に感染することによって発症する病気であるが、無症候性感染(不顕性感染)であるため、自覚症状がなく早期の診断と治療が難しいことが多い。自身でエネルギー代謝ができないクラミジアは、それ単独では分裂増殖能力(複製能)を持たず偏性細胞内寄生体の病原性細菌に分類される。
クラミジア・トラコマチスは、性交・口腔性交(オーラルセックス)・ディープキスなどによって粘膜部位に感染するが、性器(膣・尿道)だけでなく咽頭にも感染するので注意が必要である。自覚症状がない無症候性感染なので知らず知らずのうちに、クラミジアのキャリア(保菌者)になっていることも多いが、放置しておくと男性の場合には前立腺炎・副睾丸炎(精巣上体炎)・肝炎・腎炎に、女性の場合には子宮頸管炎・卵管炎・骨盤腹膜炎・肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)へと悪化していく危険性があるので早期治療することが望ましい。
また、STDとしてのクラミジア感染症は不妊症のリスクファクターであり、出産時に母親が保菌していると新生児の肺や結膜に感染することもある。クラミジアに感染していると、淋病や梅毒、トリコモナスなどそれ以外のSTDの感染率も高くなる。クラミジア感染症の治療には、テトラサイクリン系・マクロライド系・ニューキロノン系の抗生物質(抗菌剤)が処方され、通常2週間程度で治療を終結することができるが、完全にクラミジアの細菌を死滅するまで抗生物質を飲み続けることが重要である。
女性の場合は子宮頸管上皮細胞に感染することが多いが、放置しておくと、子宮内腔・卵管内・腹腔内へと感染部位が拡大することが多く、最終的には肝臓にまで到達して肝炎のリスクを高める。クラミジアに感染して妊娠した場合には、新生児が産道感染することがあり、妊娠早期の早産や流産、子宮外妊娠の危険性も高くなる。女性の自覚症状としてはオリモノが普段より多くなるくらいしかないが、男性の場合には透明の膿のような分泌物が尿道より排出され、排尿時に痛みを感じることもある。
自分自身の代謝エネルギー生産系を持たない偏性細胞内寄生体のクラミジアには、『Chlamydia trachomatis(ヒト)・Chlamydia pecorum(牛・馬・羊など家畜)・Chlamydia psittaci(ヒト・鳥類)・Chlamydia pneumoniae(ヒト)』という4種類の存在が確認されている。通称オウム群とも呼ばれるChlamydia psittaciは、オウムやインコなどペットとして飼う鳥類から感染することがあり、Chlamydia psittaciに感染するとオウム病を発症する。
オウム病は、鳥の排泄物や羽、血液を吸入することによって経気道感染するが、症状としては発熱・頭痛・喉の痛み・咳など風邪に似た症状を示すことが多い。死亡率も1%あり、肺炎への容態悪化には警戒が必要である。Chlamydia trachomatisの感染は、以前は性感染症(STD)としてのクラミジア感染症ではなく、結膜(目の粘膜)に感染する『トラコーマ』として知られていたが眼に感染するトラコーマも最悪の場合には失明の危険がある。

