カウンセリングの保証(reassurance)
カウンセラー(心理臨床家)とクライエントの間の信頼関係を強めて、問題や悩みに対する不安感を弱める基本的な技法として『保証(reassurance)』がある。
人間は成功するか失敗するか分からないこと、未来がどのように変わるか分からない状況(今よりもっと悪い状態になるのではないかという予測)、自分の体調・気分の好ましくない変化に対して強い『不安感』を抱く。しかし、信頼したり尊敬したりする他者から、『それで大丈夫だよ・あなたは間違っていないと思うよ』と言われると、その不安感が和らいで自信が持てるようになる。
『信頼する他者』から共感されたり肯定されたりすると、不安感(自己不確実感)が和らぐという心理メカニズムを応用したカウンセリング技法が『保証(reassurance)』である。
クライエントの現在の問題や悩み、人間関係、あるいは将来起こるかもしれない出来事に対して、カウンセラーが『大丈夫ですよ・あなたなら出来ますよ・あなたのその選択で良いと思います』といって保証するという技術である。その時には、カウンセラーはクライエントの現在の状況と未来の不安に対して、『一定の心理的な支持』をしているだけでなく、『心情的な責任』を引き受けるかのようなコミュニケーションをしているのである。
カウンセリング技法の基本である『保証(reassurance)』には、大きく分けて以下の3種類がある。
1.クライエントの抱えている心理的・対人関係的な問題が『生まれつきの生来的なもの』ではないと保証し、『カウンセリングを受けに来た態度』を肯定して上げること。
2.『現在とは異なる行動・発言の選択』によって、今抱えている問題状況や心理的な苦悩が解決に向かいやすくなるということを保証し、『悪循環を生む今まで通りの行動』を改めようとさせる。
3.どうせ頑張ったり工夫したりしても自分はダメだという悲観的な認知を捨てさせ、『自分も頑張って努力すればできる・今までと違うやり方をすれば解決できる』という自己効力感(セルフ・エフィカシー)を高めて上げること。
保証というカウンセリング技法には、『クライエントの不安・心配の緩和』と『クライエントの自己効力感・自信の向上』という二つの効果があり、カウンセラーがクライエントの言動を保証して上げることで、クライエントは安心感や満足感(達成感)を感じやすくなるのである。