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2013年04月21日

[メダルト・ボス(Medard Boss, 1903-1990):2]

メダルト・ボス(Medard Boss, 1903-1990):2

メダルト・ボスはオイゲン・ブロイラーの精神医学体系の影響を受けつつも、主流の『生物学的精神医学』を離脱して『実存主義的精神医学(実存主義的精神分析)』を志向した。日本の精神分析家の三好郁男は、メダルト・ボスから教えを受けた数少ない日本人である。

欧州諸国で臨床経験を積んだM.ボスは、1952年に母校チューリヒ大学の教授に就任するが、それ以降のM.ボスは科学主義的・意識的な西欧思想の世界観よりも、神秘主義的・無意識的な東洋思想の世界観に魅了されていくことになった。現存在分析の理論を構築して実践を開始するに当たって、M.ボスは実存主義哲学の影響を強く受けているが、実存主義の哲学者として著名なマルティン・ハイデガー(Martin Heidegger, 1889-1976)とは個人的な交流も持っていた。

メダルト・ボスの精神的な世界観や人間観は、ハイデガーの実存哲学と無意識的な東洋思想をベースにしたものであり、特に『現存在・存在者・世界内存在』といったハイデガー哲学独自の概念を好んで用いている。M.ボスは西欧思想・近代哲学の『自明性(非科学に対する自己正当化のロジック)』を批判しており、実証科学的な方法論では十分に解明することができない『人間の存在形式としての実存・世界内存在としての人間の生きる意味』という部分に焦点を当てた理論を主張したのである。

“自我・客観主義”を離れて無意識の広大な世界を探求しようとしたメダルト・ボスは、仏教をはじめとする神秘的な東洋思想やその思想を生み出したインドの風土に魅了されていき、1956年にはインドとインドネシアを訪問している。1956年にはインドに約6ヶ月滞在し、更に1958年にも約3ヶ月にわたり滞在して、インドの現地に残る部族の伝統的な精神医療や土着の宗教療法(シャーマニズムの要素のある治療法)を見学している。

一般的なヨーロッパ人の医師たちは、近代科学主義の立場からインド土着の宗教療法・精神治療を野蛮で遅れた治療法と見ていたが、M.ボスはインドの前近代的な治療法や質朴なインド人と出会う中で、『西洋医学にはない可能性』を見出すことになった。メダルト・ボスは、インド人に対しても『現存在分析』による心理臨床を適用することが可能だと考えたが、それと同時に科学的根拠のない伝統的・宗教的な治療法にも『現地のインド人の実存的な存在意義』を担保し続ける効果があることを見抜いたのである。

この項目は、『メダルト・ボス:1』の続きになっています。

posted by ESDV Words Labo at 09:13 | TrackBack(0) | ほ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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