ウェブとブログの検索

カスタム検索





2013年06月28日

[ウィリアム・グラッサー(William Glasser)の現実療法と上質世界:3]

ウィリアム・グラッサー(William Glasser)の現実療法と上質世界:3

W.グラッサーの考案した現実療法(リアリティ・セラピー)は、パールズ夫妻のゲシュタルト療法と同じように『過去・未来』よりも『現在』に焦点を当てる技法であり、現在の自分が置かれている状況の中から『最も効果的な行動』を選択することを共感的にバックアップするものである。

今の時点で思い悩んでみてもどうしようもない『過去のトラウマ』や『未来の不安』に囚われ過ぎずに、今の自分が実現したい目標・願望に向けて、着実に効果的な行動の選択を積み重ねていくというのが現実療法の作用機序になっている。

ウィリアム・グラッサーは、教育分野においては質の高い教育を目指す『クオリティ・スクール』の概念を提唱し、産業マネジメントの分野では『リード・マネジメント』という概念を提起している。グラッサーは人間は『5つの基本的欲求』を誰もが持っていると考え、その5つの基本的欲求最も良く満たしている理想のイメージ世界のことを『上質世界』と呼び、人間はその上質世界に近づくために活動や努力(工夫)を続けるとした。

グラッサーのいう5つの基本的欲求というのは、以下のようなものであるが、これらの欲求はアブラハム・マズローの欲求階層説とも重複するものがある。

1.生存の欲求……『食欲・睡眠欲・性欲』に代表される本能的欲求をベースにして、外的に襲われず健康な状態であり生活が安定しているという『安心・安全・健康』の欲求なども含まれる。

2.楽しみの欲求……人生を様々な観点から努力してもっと楽しみたいという欲求。『ユーモアと笑い・好奇心と体験・学習と成長・独創性』などの欲求が含まれる。

3.自由の欲求……他人に命令されたり指示されたりせずに、自分の人生を自由に生きたいという欲求。『解放・変化・自分らしさ』などの欲求が含まれる。

4.力の欲求……他人に勝利して優位な立場に立ちたい、自分の権力や地位を認められたいという優越・承認の欲求。『競争・承認・貢献・達成』などの欲求が含まれる。

5.愛・所属の欲求……自分の好きな相手から愛されて大切にされたり、逆に大切にして上げたいという欲求。自分の能力や存在を認めてくれる集団組織に所属したいという欲求。『愛情・奉仕・帰属・忠誠』などの欲求が含まれる。

理想的なイメージの世界である『上質世界』を構成しているのは、以下の3つの要素であり、人間はこれらの要素をより高いレベルで満たして自己実現するために努力と研鑽、成長を重ねているとされる。一緒にいたいと思う人が『上質世界』には必ず含まれているが、その相手が『外的なコントロールの条件づけ』で自分を支配したり操作したりしようとする時には、その相手は上質世界の構成要素から外されてしまうことになる。

1.一緒にいたい、一緒に人生を生きていきたいと思う好きな相手や尊敬する相手。

2.自分が所有したいと思うモノ、自分が経験したいと思う事柄。

3.自分の行動・感情を規定している認知(物事の考え方・世界観)

ウィリアム・グラッサーは非行行為の履歴がある少女の矯正教育や生活指導の経験を積む中で、『強制・人格否定・批判(侮辱)』には教育効果がないということに気づき、自主的な選択と納得によって質(クオリティ)の高い学習を進めていく学校である『クオリティ・スクール(quolity school)』やそのスクールで働く教員を養成する教育者訓練センターを建設した。W.グラッサーの理想とするクオリティ・スクールに関する著作として『落伍者なき学校(1969)』が知られている。

W.グラッサーの公教育改革のアイデアは、アメリカだけではなくカナダやオーストラリア、アイルランドなどでも実験的に採用されている。選択理論をベースにした『グラッサー・クオリティ・スクール』の取り組みに参加している学校はアメリカで250校以上あり、その高度な審査基準をすべてクリアーしているクオリティ・スクールも約20校ほど存在しているという。W.グラッサーの代表的な論文や著作には、以下のようなものがある。

『現実療法,1975』(Reality Therapy,1965)

『同一性社会,1985』(The Identity Society, 1972)

『落伍者なき学校,1977』(School without Failer, 1969)

『人生はセルフ・コントロール,1985』(Take Effective Control of Your Life, 1984)

分かりやすい邦訳書としては、『グラッサー博士の選択理論 幸せな人間関係を築くために』『幸せな結婚のための8つのレッスン』『15人が選んだ幸せの道 選択理論と現実療法の実際』『あなたの子どもが学校生活で必ず成功する法』などの著作がある。

この記事は、『ウィリアム・グラッサー(William Glasser)の選択理論と現実療法:2』の続きになっています。



posted by ESDV Words Labo at 10:18 | TrackBack(0) | く:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック