J.D.クルンボルツ(John D. Krumboltz)3:キャリアカウンセリングと意思決定スキル
職業選択やキャリア・デベロップメントに際して、後天的な努力・工夫によって変えられる要素が『学習経験』と『課題へのアプローチ・スキル(意思決定スキル)』である。学習経験というのは前述した『道具的学習経験(オペラント的学習経験)』と『連合的学習経験(強い感情と出来事の記憶の結合)』のことを指している。J.D.クルンボルツとハメルが提唱した『課題へのアプローチ・スキル(意思決定スキル)』は、以下の7つのステップ(段階)から成り立っている。
1.解決すべき問題(選ぶべき選択肢)は何かを具体的に言葉で明確化する。
2.行動計画をたてる。
3.価値観(目的意識)を明確化する。
4.選択肢と代替案を考える。
5.起こりうる結果を予測する。
6.選択肢ごとの情報収集をする。
7.実際の行動を開始する。
クルンボルツは職業選択のキャリアカウンセリングにおいて、自分の能力・興味・価値観に応じた具体的な行動計画を立て、いくつかの選択肢の情報収集をしながら検討することを勧めたが、それと同時に『職業キャリアの8割は運(偶然)で決まる』という持論を元に『プランド・ハプンスタンス・セオリー(計画された偶然理論)』を提起している。偶然に起こる出来事がその人のキャリア形成に大きな影響を及ぼすことは多いが、クルンボルツはこの『偶然の出来事』を『プランド・ハプンスタンス(計画された偶然・キャリア形成の機会にできる偶然)』に変えていかなければならないとした。
プランド・ハプンスタンスのチャンスを掴むために重要な要因は、以下の5つとされている。
1.好奇心……新たな学びや体験の機会を探求する好奇心。
2.持続性……自分が頑張ると決めたキャリアを途中で投げ出さずに持続すること。
3.柔軟性……問題状況に合わせて認知・行動を柔軟に変えていくということ。
4.楽観性……悲観的な考え方をせずに楽観的に構えることで次のチャンスを掴みやすくなる。
5.冒険心……リスクや不安を恐れずに実際の行動を起こすことで、キャリア形成の取っ掛りを作りやすくなる。
J.D.クルンボルツは1970年に『日本学生相談学会(中村弘道理事長)』の招聘を受けて来日したことがあり、その時に『カウンセリングの改革』というテーマの講演を行っている。キャリアカウンセリングや職業相談について興味のある人は、『ドナルド・E・スーパー』や『エドガー・H・シャイン』の記事も合わせて読んでみて下さい。
この記事は、『前回の記事』の続きの内容になっています。