マルクス主義,マルキシズム(Marxism)・共産主義:2
史上初となるロシア革命(1917年)を主導したウラジーミル・レーニン(1870-1924)も、1913年に『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分』というマルクス主義の解説書を書いている。レーニンはマルクス主義の三つの源泉を『ドイツ哲学・イギリス経済学・フランス社会主義』にあるとし、マルクス主義の三つの構成部分として『弁証法的唯物論・経済学・社会主義思想』を指摘した。
すなわちマルクスは、ヘーゲルが完成させたドイツ哲学の『弁証法的唯物論』を経済社会の発達段階を規定する『史的唯物論』へと展開させ、アダム・スミスやリカードの労働価値説を資本家による労働者の搾取を説明する『剰余価値説』へと転換させたのである。人民の平等を社会保障によって追求するフランス社会主義を更に発展させたものが、人間の真の自由と平等を解放するとされる『共産主義(プロレタリア革命論)』であり、共産主義社会では国家も階級も権力も不平等も貨幣さえも消滅しているとされる。
フランス社会主義について、マルクスは1871年にフランスで設立された『パリ・コミューン』を高く評価しており、『本質的に労働者階級の政府であり、横領者階級に対する生産者階級の闘争の所産であり、労働の経済的解放をなしとげるための、ついに発見された政治形態であった』と称賛している。エンゲルスもまた、パリ・コミューンを具体化したプロレタリアート独裁の実例であるとして認めている。
マルクスは共産主義革命やプロレタリア独裁を推奨したが、革命・独裁そのものが目的ではないことに注意が必要である。プロレタリア独裁(労働者独裁)というのは資本主義社会から社会主義社会への過渡期に出現する『暫時的な国家運営体制』に過ぎず、みんながみんなのために能力を発揮して働き価値を生み出す真の共産主義社会の段階になると、国家や政治権力そのものが消滅した協同社会に移行するとされている。
カール・マルクスはその著作人生の大部分を資本主義経済の批判的分析に費やして、大著『資本論』を書き上げているのだが、マルクスが理想とした共産主義社会が具体的にどのような社会であるかについては余り多くの著述を残していない。
マルクスは共産主義社会を『財の分配(労働と報酬)の原理』から『低次の段階』と『高次の段階』に区別している。低次の段階では『人々は自分の能力に応じて働き、労働の成果に応じて受け取る』ことになり、まだ一定の所得格差が残っているという。それが共産主義社会の高次の段階になると、『人々は自分の能力に応じて働き、必要に応じて受け取る』ことになり、人間は自分の能力が高いからといって他人よりも多くの収入・報酬を求めなくなる(求めなくても良いくらいに社会全体が豊かになりモノ・サービスが溢れるようになる)と考えていた。
マルキシズム(マルクス主義)と精神分析学の統合を試みた人物が、『疑惑と行動(1965)』などの著作を残した左派・社会派の精神分析家エーリッヒ・フロム(E.Fromm)である。この記事は、『前回の記事』の続きの内容になっています。