メニエール病(Meniere's disease)4:メニエール病の治療法とストレスの影響
メニエール病の治療の中心は『薬物療法』になるが、処方される薬はめまい・吐き気の主症状を抑制する薬や血行促進剤、ビタミン剤(ビタミンB12製剤)、リンパ水腫改善の利尿剤(イソバイド,メニレット)など対症療法的なものが殆どであり、メニエール病の本態を直接的に治癒することは困難である。急性期で激しいめまいや吐き気が起こって起き上がれないような状態であれば、鎮静・催眠の精神作用に期待する意味もあって抗ヒスタミン剤・精神安定剤(マイナートランキライザー)が処方されることもあり、メニエール病の発症・維持には精神的ストレスが関係していることが多いので、これらの向精神薬の効果があることもある。
急性期のめまいと吐き気が強すぎて内服薬を飲むことが不可能な時には、炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン)やトラベルミン、制吐剤などの薬剤を点滴で静注する。急性期に症状が激しくて不安感・パニックなども見られる場合には、点滴による栄養剤・吐き気止め(制吐剤)の静脈注射に、精神状態を穏やかにして眠気を誘うマイナートランキライザーや抗ヒスタミン薬が一緒に混ぜられることもある。
薬物治療で期待できるのは、めまい発作の回数を減らすことや軽くすることであるが、『難聴・耳鳴り(聴覚異常)』などの症状の進行は止められないことも多い。難聴が悪化している時には、ステロイド剤の内服薬が用いられることがある。極端にめまいが激しくてずっと起き上がれなかったり、難聴でまともに音声を聞き分けられなくなったりといった症状の重症化が見られる場合には、『外科的治療(外科手術)』も選択肢に入ってくることがある。ここでいう外科手術とは、『内リンパ嚢開放術・前庭神経切断術』などの手術のことである。
メニエール病では、血圧を低下させて内耳の浸透圧を低くする『減塩治療(塩分摂取量を減らす食事療法)』やウォーキングやランニングなどの有酸素運動を継続的に行って新陳代謝・発汗量(排尿量)を高める『運動療法』にも効果があるとする論文報告がある。『中耳加圧療法』といって物理的な圧力をかけることで、内耳のリンパ水腫を和らげようとするような治療法も出てきている。
疫学調査では、肥満体型よりも普通体型・痩身体型のほうがメニエール病に罹患しやすいことが分かっており、病前性格はうつ病(気分障害)と重複する要素が多く、『几帳面・生真面目・神経質・完全主義・ストレスに弱い』などの特徴が挙げられている。身体的に過剰な疲労があったり、心理社会的ストレスが非常に強くなっていたり、睡眠時間が慢性的に不足していたりすると、メニエール病の発症リスクが上がるようである。メニエール病には子への遺伝性はなく、死亡するリスクもないのだが、なかなか完全に健康な状態には戻りにくいという『難治性疾患』ならではの問題や苦悩がある病気である。
メニエール病としての診断基準を完全には満たさない『不全型メニエール病(類似した亜型)』として、『蝸牛型メニエール病(低音聴覚障害が中心のもの)・前庭型メニエール病(頻発するめまいが中心のもの)・レルモワイエ症候群(進行性の難聴からめまいへと症状が変化するもの)』などが定義されている。
この記事は、前回の記事の続きの内容になっています。
○メニエール病(Meniere's disease)1:病気の歴史と症状
○メニエール病(Meniere's disease)2:メニエール病の主要な4症状
○メニエール病(Meniere's disease)3:メニエール病の診断基準

