ルイス・L・サーストン(Louis Leon Thurstone, 1887-1955)
ルイス・L・サーストン(Louis Leon Thurstone, 1887-1955) はアメリカの心理学者であり、初め数学・工学などの理数系の学問を大学で学んだ後、心理学の知能研究分野の『量的研究』に精力的に取り組んだ。ルイス・L・サーストンは心理学研究の分野に初めて数学的な方法論を導入した心理学者とも言われており、シカゴ大学で教授を勤めていた間に『因子分析法』や『尺度構成法』などの理論を考案して実用化するなどの功績を上げている。
サーストン以前の性格心理学では、性格傾向を代表的あるいは典型的なタイプ(型)に分けてそれに人間を当てはめる『類型論(タイプ論)』が主流であったが、サーストンは人間の性格構造や知能が単一の因子ではなく複数の因子によって構成されているという『多因子説』を提示して、『因子分析』に基づく性格理論などを普及させていった。
知能研究の分野においても、イギリスの心理学者チャールズ・スピアマンが主張していた“知能は単一の概念や基準によって一般的に測定・比較できる”という『g因子説』を反駁して、知能は複数の因子が複雑に関係しているので様々な概念や基準によって総合的に捉えなければならないとするサーストンの『多因子説(知能の多因子決定論)』のほうが心理学分野で広まっていくことになった。
サーストンは大勢の被検者を対象にした知能検査(IQ測定検査)を繰り返し行って、得られた結果に因子分析を施したが、その結果、人間の知能(精神機能)を構成する7つの因子として抽出されたのは以下のようなものである。質問紙法の心理テスト開発の分野でも、等現間隔法を用いた客観的な『態度尺度』を作成することに成功しており、社会的態度を測定するための心理テストの精度の向上に果たした役割は大きなものがある。
○言語理解能力……文字や音声で表現された言葉(文)の意味を正しく理解する精神機能。
○語の流暢性……話し言葉を流暢に話すための精神機能。
○数の処理能力……数字を用いた計算や測定、分析、事象の理解などに関する精神機能。
○空間能力……空間の広がりやその中での位置・幅などを認識する精神機能。
○連想記憶力……一つの概念やイメージから新たな概念やイメージを連想していく精神機能。
○知覚速度……物事・現象などをどのくらい早く知覚して理解できるかという精神帰納。
○帰納的推理……科学的思考力に関係する精神帰納であり、複数の事象(データ)を観察してそこに共通するルールや法則を合理的に抽出する仮説検証の能力。
サーストンの心理学分野における数学的な研究方法は、心理検査を多く開発したJ.P.ギルフォードなどにも大きな影響を与えている。