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2007年04月02日

[クライエント中心療法の“経験に開かれていること(openness to experience)”]

クライエント中心療法の“経験に開かれていること(openness to experience)”

C.R.ロジャーズが考案したクライエント中心療法(来談者中心療法)の究極的な目標は、健康・成長・発展・適応へと向かう実現傾向を促進して、『十全に機能する人間』として肯定的な人生を生きられるように支援することである。

カール・ロジャーズは、人間には誰でも精神的な健康を回復する潜在的な力が備わっていると考え、自我(人格)の機能を成長させて人生を楽しく発展させていくことが可能であると考えていた。その意味で、ヒューマニスティック心理学の基礎理論と潜在的な実現傾向を前提とするクライエント中心療法(来談者中心療法)は、肯定的で楽観的な人間観を持っていると言える。

『十全に機能する人間』とは、実現傾向によって保証される潜在的な精神機能及び対人スキルを十分に発揮している人間のことであり、『経験に開かれている(openness to experience)』状態のことである。経験に開かれていることとは、演技的・表層的・欺瞞的ではない『ありのままの自己(セルフ)』で、現象世界と向き合って『生き生きとした現実』を直接的に経験していることである。

ロジャーズは、自然界の生命体の一種という意味合いを強調して、人間のことを実現傾向のような自然の摂理に従う“有機体”と表現することがある。ありのままの自己とは、有機体(人間)に過剰な防衛機制や過度の圧力(ストレス)がかかっていないリラックスした状態の自己(セルフ)である。

普遍的無意識(集合無意識)を構想したユングの元型(archetype)にあるセルフ(意識と無意識の中心としての自己)よりも、“意識的”で“身体的”なものなので、ロジャーズの言う“自己(セルフ)”には観念的・理論的な要素が殆どない。ありのままの自己で現実世界と対峙していて経験に開かれている時には、有機体(人間)は経験の一瞬一瞬を“身体感覚を伴う現実”として情緒的に感じ取ることができる。感情・実感・身体感覚を伴うリアリスティックな経験ほど、問題状況(心理状態)を好転させるカウンセリング効果が高い。頭脳で考えるのではなく、感覚で自然に感じ取ってしまう経験が、“経験に開かれた状態”なのである。

経験に開かれている状態にあるリラックスした自己は、現実の外界や他者を歪曲したり誤認したりすることなく“あるがままの対象・事態”として認識することができるようになり、そのことによって過剰な防衛機制を使う場合よりも現実適応(環境適応)を高めることができるようになる。開かれた経験は、過去の記憶や過度の防衛によって歪ませられることがないので、自然に自己(セルフ)の一部として統合されていき、人格的な成長や社会生活の発展を促進することになる。



posted by ESDV Words Labo at 07:05 | TrackBack(0) | け:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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