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2013年09月28日

[フランシス・ゴールトン(Francis Galton):1]

フランシス・ゴールトン(Francis Galton):1

フランシス・ゴールトン(Francis Galton,1822-1911)は、進化論(自然淘汰+突然変異による種の進化)を提起したチャールズ・ダーウィンの従兄弟に当たるイギリスの人類学者・統計学者・遺伝学者である。進化論の影響を受けたフランシス・ゴールトンは、人間の外見や能力、特徴(性質)といった『形質』が親から子にどのように遺伝するのかということに強い興味を持ち、『統計的な家系研究』を熱心に行った。

F.ゴールトンは統計的手法を駆使した家系研究から、同じ血統から多くの知的・社会的に優秀な人物が輩出されていることに注目し、『優れた才能は親から子に遺伝する』という仮説を立て、精神的能力の遺伝性を科学的に実証することを目指した。

ゴールトンの家系研究の成果や形質(形態・能力)の優性遺伝の仮説は、著書の『天才と遺伝(Hereditary Genius,1869)』にまとめられ、進化論の影響の下で次第にゴールトンは『優生学(Eugenics)』の創設へと突き動かされていく。優生学は優良な個体が劣等な個体に生存競争の自然淘汰で打ち勝っていくことで、社会全体も進歩・発展していくことになるというハーバート・スペンサーの『社会心理学(ソーシャル・ダーウィニズム)』にも強い影響を受けている。

優秀な能力や適性が親子で遺伝するという仮説の検証過程で、F.ゴールトンは『ゴールトンの退行法則(Galton's law of regression)』とよばれる法則性を発見した。これは平均的な両親からは平均的な能力を持つ子供が生まれ、平均以下の両親からは平均以下の子供が生まれるが、『極端に優秀な両親』や『極端に劣等な両親』の子供はその優等性と劣等性の特徴が弱められるという法則である。フランシス・ゴールトンは、1883年に優生学(Eugenics)という言葉を初めて使用したことでも知られる。

F.ゴールトンは先天的な遺伝要因だけで人間の精神的能力の優秀さが決まるという考え方をしたが、この考え方は『子供の教育環境・親の持つ文化資本・家庭にある教養や勉強の資源(蔵書の本の量・親子間の知的な会話レベル)』などを無視しているという欠点があり、優れた才能が生物学的に遺伝しているという仮説は厳密には検証されていない。

つまり、親の優れた知性や能力が子に遺伝しただけではなく、『勉強に取り組みやすい家庭の環境+向学心を高めやすい親の態度』だったり『知識を得やすい本の量+物事を深く考えるきっかけになる親子間の会話のレベル』だったりが、子の学力・能力・適性に大きな影響を与えている可能性が高いということである。現在の発達心理学や学習心理学では、親からの遺伝形質の遺伝だけで子の精神的能力(知能)が決まってしまうという遺伝子決定論は否定されており、『遺伝要因』と『環境要因』が相互作用するプロセスによって子の能力が決まってくるという仮説が有力である。

posted by ESDV Words Labo at 22:25 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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