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2013年09月28日

[フランシス・ゴールトン(Francis Galton):2]

フランシス・ゴールトン(Francis Galton):2

ゴールトンは優生学において、人間の精神的能力は身体的特徴の遺伝と同じく、同一の法則によって遺伝するという前提を立てて、優秀で倫理的な男女が結婚して子孫を残せば人類全体の知的・倫理的なレベルは向上していくが、劣等で非道徳的な男女が結婚して子孫を残すことで人類全体の質が段階的に低下していくとした。

このゴールトンの優生学は、個人間の精神的能力だけではなく人種間・民族間にも精神的能力の優劣があるという思想につながっていき、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺のホロコーストにも応用されたため、優秀な遺伝子だけ(その優秀さの基準自体は主観的かつ恣意的であるが)を残すことを目的とする優生学は『悪魔の学問』として道徳的・人道的に非難されることも多い。

道徳的な退廃者・犯罪者を多く輩出した『カリカック家の家系研究』などから、善良な市民社会に適応することができない劣等な遺伝子を持つ男女(特に女性の遺伝子が問題視される向きもあった)は、子供を産むべきではないとする差別的な価値観が生まれて、その人物・家系(血統)の優劣を分ける権力の恣意的な判断によって中絶・断種が推奨されたりもした。

優生学はユダヤ人だけではなく、障害者や高齢者など社会経済的な生産活動に貢献できない人たちを処分する根拠として悪用された部分もあり、『人間による独断的な人間(社会的弱者・被差別民族)の生命の取捨選択』という悲劇を引き起こした。

F.ゴールトンは、『人間の能力とその発達の研究(Inquires into Human Faculty and Its Development,1883)』の中で、人間の一般的な知能・精神的能力を測定するための心理検査(メンタルテスト)の方法を開発し、多くの被検者からデータを集めて『パフォーマンスとして出される精神的能力の結果』を統計的に分析した。精神的能力の発達に影響を与える遺伝要因と環境要因を区別するために、遺伝情報が同じと想定される一卵性双生児の成育環境を整えてその能力の差異を測定する『双生児法(twin method)』の研究を行ったりもした。

精神機能と身体活動の相関関係に着目して、『知覚・感覚の測定方法』やそのための器具を考案したりもしており、自分の内的世界や性格特性を振り返って回答する『内省法(introspection)』に基づいた心理テストが作成されたりもした。手がかり語を与えてみてそこから連想される個人的経験の早期報告を求める『ゴールトンの手がかり法』は、カール・グスタフ・ユングが個人的無意識の内容(過去の抑圧された個人的経験)を探索するために用いた『自由連想法』にも影響を与えているとされる。

F.ゴールトンは個人間の能力差を測定する科学的な方法として、『質問紙法・記憶力検査・人格特性診断用の連想語検査』などのメンタルテストを考案したとされるが、それらのメンタルテスト(心理テスト)の結果に対して初めて統計的な分析を行った人物でもある。F.ゴールトンは『近代統計学の父』と呼ばれるほどの統計学の専門家であり、統計的方法の革新として正規分布(normal distribution)や相関指数(index of correlation)の考え方をしたり、『平均への回帰』について初めてまとまった記述をしたりしている。ゴールトンの統計学に関する知識・方法は、その後、K.ピアソンの相関係数やC.E.スピアマンの因子分析などの発見にも貢献することとなった。

フランシス・ゴールトンは『優生学』の提唱者としての悪名ばかりが広まっているが、心理学分野においては『近代的な個人的心理学』の研究基盤を確立しただけでなく、『心理テスト(メンタルテスト)』を用いた人間の精神機能・性格特性の測定方法を大きく進歩させた人物でもあった。父が富裕な銀行家のサミュエル・テルティウス・ゴールトンで大きな財産を残したため、F.ゴールトンはその財産を使って世界各地を旅しながら人類学のフィールドワーク(進化生物学でも現地調査のフィールドワークは重要な研究方法だった)を進めた冒険家としての側面も持っていた。

この記事は、『前回の記事』の続きになっています。

posted by ESDV Words Labo at 22:27 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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