メンタル・エイジ(mental age)と知能指数(IQ)
メンタル・エイジ(mental age)とは主に、フランスの心理学者アルフレッド・ビネー(Alfred Binet, 1857-1911)とビネーの友人の医師シモンが1905年に開発した『ビネー式知能検査』で用いられている概念である。
メンタル・エイジは『精神年齢』と日本語に訳されているが、精神機能の正常性や精神(人格)の価値を判断するような年齢指標ではなく、純粋に『実年齢に対応した知能(知的能力)の高低』を測定するための年齢指標(操作的概念)である。つまり、一般的な会話で良く言われている『あの人は精神年齢が幼い=人間性が幼稚・未熟で馬鹿げた判断や行動をする』といったような意味合いでは使われない。実年齢のことは、『生活年齢 (Calendar Age, CA)』という概念で表現している。
アルフレッド・ビネーは、フランス文部省付属の専門機関『異常児(精神遅滞児)問題研究委員会』の嘱託によってビネー式知能検査を開発したが、その目的は普通学級の授業についていくことができない精神遅滞の児童(現在の知的障害児)をスクリーニングして、特殊支援的(生活訓練的)な教育を受けさせることであった。初期のビネー式知能検査は、30個の問題を易しい問題から難しい問題へと難易度順に並べた簡単なテストだったが、1908年版から児童の知能水準を相対的に測定するために『精神年齢(Mental Age,MA)』の概念を知能検査に導入した。
精神年齢というのは、平均的な3歳児を対象にした問題に正しく答えられれば『精神年齢3歳』となり、平均的な10歳児(小学校4年生)を対象にした問題に正答できれば『精神年齢10歳』となるといったものである。即ち、精神年齢とは『当該年齢水準の問題に正しく答える能力や知識があること』によって決められる年齢である。実年齢が10歳であっても当該年齢が18歳の難しい問題に正答することができれば、その子供は精神年齢が18歳ということになる。
A.ビネーらは同じ学校教育を受ける文化圏に属するある年齢集団の子供に問題を解かせてみて、子供達のうちの“50〜75%”が正しく回答できた問題を『当該年齢の知能水準を測定できる問題』として定義した。8歳の子供の集団がその問題を解いてみて、50〜75%の子供が正解できた問題が、『精神年齢8歳に到達しているか否かを推測する問題』となるため、(半数に近い子供が正解できない問題という意味では)難易度は結構高いとも言える。
1916年に、IQ(Intelligence Quotient, 知能指数)で検査結果を出す『スタンフォード・ビネー式知能検査』を作成したのが、スタンフォード大学のL.M.ターマンである。IQ(知能指数)そのものの発案をしたのはドイツの心理学者ウィリアム・シュテルンであり、IQを求める公式についても『精神年齢(MA)/生活年齢(CA)×100』と定められた。実年齢と精神年齢(知能)が釣り合っている時に平均値であるIQ100が出るようになっている。実年齢が低いのに精神年齢が抜きん出て高い時に、IQ140〜160以上の子供(俗に天才児と呼ばれたりもする)が出たりもするが、早熟型の天才児では長期的には突出した業績・成功を残さないケースも多い。

