M.C.モルツビーの洞察誘導(Maultsby's analogy procedures)
心理療法家のM.C.モルツビー(M.C.Maultsby)が開発した論理療法(rational therapy)の効果を発揮しやすくするためのイメージ誘導方法が、モルツビーの洞察誘導(Maultsby's analogy procedures)と呼ばれるものである。
クライアントが抱えている心理的な悩み・問題と関係した『類似的・相関的な事例(アナロジー・ケース)』を用いて説得力を高めるというところに、モルツビーの洞察誘導の技法の特徴がある。カウンセラーもオープンマインドで、自分が体験したアナロジー・ケースを話したりもするが、このイメージ誘導的な技法の目的は『イラショナル・ビリーフ(非合理的な問題を悪循環させる考え方)の修正』にある。
モルツビーの洞察誘導(Maultsby's analogy procedures)の技法は、アルバート・エリスが創始した論理情動行動療法(REBT)と同時に実施することでそのシナジー効果(相乗効果)が高まるが、それは『イラショナル・ビリーフ(非合理的な思考,irrational belief)』を『ラショナル・ビリーフ(合理的な思考, rational belief)』に置き換えることの意義をより深く実感して、前向きに『思考修正の課題・宿題』に取り組めるようになるからである。
p> モルツビーの洞察誘導(Maultsby's analogy procedures)の実際の手順は、以下のような感じで進められる。
1.クライエントに最近悩んでいる問題・事柄を具体的にイメージさせる。
2.『クライエントが悩んでいる問題と類似した事例』を取り上げて、主観的な思考・信念(ビリーフ)を自己肯定的に変えていくことで、問題状況や心理状態が良くなっていくことを説明する。アルバート・エリスのABCDE理論が意味する『客観的な状況が直接、問題を引き起こす』のではなく『自分の非合理的な物事の捉え方や偏った人生に対する信念が問題を引き起こす(気持ちを悪化させて自信を失わせる)』ということを理解してもらう。
3.カウンセラー自身の体験談やより具体的な個別事例を取り上げながら、『物事に対する考え方・信念』と『それが引き起こす心理状態や問題状況への影響』のつながりについて考えてもらう。
4.初めにイメージしてもらった『クライアント自身の悩み・問題』について、どのような受け止め方や考え方をしているのかをセルフモニタリング(自己チェック)してもらい、その考え方に『非合理的・非現実的・自己否定的(悲観的)な要素』が含まれていないかをカウンセラーと一緒に考えていく。
5.クライアントの持つ『イラショナル・ビリーフ(irrational belief)』を『ラショナル・ビリーフ(rational belief)』に置き換えていくために、『今までとは違うポジティブな物事の考え方や希望の持てる人生に対する信念』を、クライアントに“自分のイメージ(未来・自己・他者への想像力)”を駆使して“自分の言葉”で考えてもらう。