H.A.マレーの欲求-圧力仮説と欲求分類表(list of needs)
TAT(主題統覚検査)を開発したアメリカの心理学者H.A.マレー(H.A.Murray)は、『欲求-圧力仮説』に基づくパーソナリティ理論を展開している。欲求-圧力仮説というのは簡単に説明すると、人間の行動を内面的に突き動かす『欲求(need)』と外部的な環境条件で規定する『圧力(pressure)』とを二元論的に分けて考えようとする仮説である。
欲求-圧力仮説は、精神分析など力動的心理学の理論であり、内面的な『欲求』と環境要因としての『圧力』とのせめぎ合い(葛藤)を前提にしているのだが、圧力には欲求充足を促進しようとする『プラスの圧力』と欲求充足を阻害しようとする『マイナスの圧力』との二つがある。理解・共感のある支持的な上司は『プラスの圧力』になるが、理解・共感がなくて強権的な上司は『マイナスの圧力』になりやすい。
H.A.マレーは、人間を内部的かつ自発的な行動へと突き動かす『欲求』を分類しているが、この欲求の種類を一覧表にしたものが『欲求分類表(list of needs)』である。マレーはこの欲求分類表において、人間の欲求を身体的・生理的な欲求である『臓器発生的欲求』と社会的・対人的な欲求である『心理発生的欲求』との2つに大きく分けている。
マレーの欲求分類表はTAT(主題統覚検査)と合わせて、クライアントの正確なパーソナリティ理解に役立てられているが、一覧表にされた人間の欲求の種類として上げられているのは以下のような欲求である。
臓器発生的欲求……呼吸欲求・食欲求・飲水欲求・授乳欲求・排泄欲求・性的欲求・知覚欲求・傷害(死)の回避欲求・毒性回避欲求・暑熱・寒冷回避欲求など。
心理発生的欲求……保存欲求・獲得欲求・秩序維持欲求・承認欲求・優越欲求・達成欲求・支配欲求・従属欲求・自己顕示欲求・攻撃欲求・防衛欲求・回避要求・養護欲求・依存欲求・親和欲求・排除欲求など。