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2014年01月14日

[J.H.シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)と自律訓練法(autogenic training)]

J.H.シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)と自律訓練法(autogenic training)

ヨハネス・ハインリヒ・シュルツ(Johannes Heinrich Schultz,1884-1970)は、ベルリン出身の精神科医でイエーナ大学で医学部教授を務めた。J.H.シュルツは日本では、心身医学的な自己催眠療法の一種である『自律訓練法』の創始者として知られており、日本の精神科医の成瀬悟策(なるせごさく)との共著で『自律訓練法(1963)』という本も上梓している。

シュルツは精神病理学の分野においては、『当時の神経症(neurosis)の分類・整理』で貢献しており、神経症を病因論に基づいて『外因性異神経症・生物学因性辺神経症・心理因性層神経症・性格因性核神経症』などに細かく分類し定義していた。現代風にシュルツの病因論を解釈すれば、『環境や外傷の要因・生物学的要因・心理的要因・性格的要因』に分類していたことになる。

J.H.シュルツは人間存在を『心身一如(心理と身体が相互作用しているあり方)』と定義することで、精神的要因が疾病・症状に与える影響を考える現代の『心身医学』の基礎を築いた人物でもある。

自律訓練法ではリラックスした心理状態と弛緩させた筋肉の状態を利用して、自分自身を催眠誘導していくが、シュルツが目指したのは『不随意的な自律神経系のコントロール』であり、筋弛緩法と同時に行う自己暗示によって『脳幹機能・自律神経系のコントロール(自己暗示による心身の完全なリラックス状態と緊張・不安やストレスの軽減)』を実現しようとしたのである。

自律神経系やその中枢である脳幹の自己制御というアイデアは、ドイツの大脳生理学者フォクトが行っていた臨床的な催眠研究を参考にしたといわれる。J.H.シュルツは自律訓練法の技法の原型を1926年に“autogene Organ bungen”として発表しているが、自律訓練法が現在ある形として確立されたのは1932年であり、日本には成瀬悟策などを中心にして1950年代に導入された。

自律訓練法で使用する心の中で繰り返し唱える公式(文章)は、以下の『1つの背景公式(基本公式)』『6つの練習公式』である。極めて簡単な文章で、誰でも短時間で暗唱しやすいことも自律訓練法の実用的な魅力になっている。自律訓練法を実施する時の基本的な意識の状態は、『受動的(受身的)な注意集中』と呼ばれているが、これはぎゅっと意識して集中するのではなく、ぼんやりとしたリラックスした意識で、それとなくその部分に注意を向けるということである。

背景公式(基本的安静練習)……『気持ちがとても落ち着いている』

第1公式(四肢重感練習)……『両腕・両脚が重たい』

第2公式(四肢温感練習)……『両腕・両脚が温かい』

第3公式(心臓調整練習)……『心臓が静かに規則正しく(自然に)打っている』

第4公式(呼吸調整練習)……『楽に(自然に)呼吸している。呼吸が楽だ』

第5公式(腹部温感練習)……『お腹が温かい』

第6公式(額部涼感練習)……『額が(心地良く)涼しい』

自律訓練法は自己暗示によってある種のトランス状態(変性意識状態)に推移することがあり、その時には不快な生理的変化やめまい・脱力感などの意識状態の変化が起こってしまうこともある。こういった自律訓練法のトランス状態による副作用を軽減するために行うのが、以下の『消去動作』と呼ばれるものである。消去動作というのは、自己暗示がもたらした生理学的変化(意識状態の変化)を消去・解除するための一連の動作のことを意味している。

自律訓練法の消去動作

1.両手の開閉運動……両手の手のひらを何度か大きく開いたり閉じたりする。

2.両肘の屈伸運動……両方の肘を曲げたり伸ばしたりして力が入っている感覚を味わう。

3.背のび……大きく伸び伸びと後方に向けて何度か背伸びをしてみる。

4.深呼吸……ゆっくり深く息をお腹に吸い込んでから、吸う時以上の時間をかけるイメージで、ゆっくりと長く息を吐き出して気持ちを落ち着かせていく。

自律訓練法の効果を最大限に発揮するためには、精神科医や心理療法家などの専門家の指導・アドバイスを受けながらやるのが一番であるが、『体を締め付けるベルトやネクタイなどを外す・適温に保たれた静かで落ち着ける環境で実施する・体調を万全に整えて空腹や便意がないようにする』などの環境調整の努力も必要である。

自律訓練法は最近は以前よりも実施頻度が落ちていると言われるが、精神科・心療内科・神経科などで実施されているグループセラピー(集団精神療法)の一つのメニューとしてこの自律訓練法が組み込まれていることも多い。自律訓練法には、疲労回復や倦怠感の改善、ストレス・緊張の緩和、仕事や勉強の能率と意欲の向上、抑うつや不安といった精神症状の軽減などの効果を期待することができる。



posted by ESDV Words Labo at 16:02 | TrackBack(0) | し:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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