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2014年02月11日

[力動精神医学(dynamic psychiatry)・力動的心理学(dynamic psychology)と記述精神医学(descriptive psychiatry):2]

力動精神医学(dynamic psychiatry)・力動的心理学(dynamic psychology)と記述精神医学(descriptive psychiatry):2

客観主義の記述精神医学は、操作的診断学に基づくAPA(アメリカ精神医学会)の『DSM(精神障害の診断・統計のマニュアル)』の作成にも寄与しているが、精神疾患を同じ基準で診断するための計量化や観察する症状の均質化を推し進めたことは一長一短がある。

記述精神医学の長所は、科学的研究の数量的な方法論に立脚していて、『客観的な精神医学の軽量化・科学化』に貢献しやすいということである。短所はヒューミスティックな温かみや共感性を感じにくく、『患者の内面心理・悩みへの興味関心』が掻き立てられにくいことである。だが、現代では静的な記述精神医学と動的な力動的精神医学は対立するものではなく相補的なものになっている。

力動的精神医学と記述精神医学の大きな差異の一つは、『患者の病理性・異常性の認識(患者である病者と健常者との連続性の認識)』にあり、力動的精神医学は治療者もまた患者と同様に何らかの原因によって精神疾患になり得る存在だと考えていて、『病者と健常者との連続性(移行性)』が常に意識されている。記述精神医学のほうは正常と異常の境界線は明確なものであると考えており、治療者と患者の精神状態の間にある連続性(移行性)は殆ど否定されている。

記述精神医学では、正常な治療者が異常(病理的)な患者を観察・検査して治療方針を立てるという手順をメカニカルに遂行していくが、そこには患者の内面心理に寄り添って共感的な観察や治療的なコミュニケーションをしようとする動機づけが乏しい。力動的精神医学では『転移分析』が有効な治療方法して重視されているように、患者の内面心理や精神状態を自分の立場に置き換えてみて共感的に理解しようとする姿勢が強くなっている。

精神分析の概念・理論や人間観を原型とする『力動的精神医学』には、以下のような特徴や視点が見られる。

1.力動性……精神分析の『無意識の決定論』に示されるように、無意識的なエスや超自我の力の葛藤(複数の心理的な力のせめぎ合い)などによって意識内容(精神病理の現れ)が決定されている。

2.構造論……精神分析の自我構造論の『エス‐自我‐超自我』が前提になっていて、それらの心的要素が相互作用している。

3.局所論……精神構造論の『無意識‐前意識‐意識』が前提になっていて、そのいずれかの場所(局所)で精神現象が発生すると考える。

4.エネルギー経済論……心的エネルギー(リビドー)の移動・葛藤・増減によって、精神現象や精神病理が発生するのだと考える。

5.発生論……性格形成のプロセスを『性的精神発達論(リビドー発達論)』に基づいて考えており、乳幼児期の体験・記憶の影響を発生論の観点から重視している。

6.適応論……精神疾患(神経症・精神病)を、ありのままの現実を認識して意識化できないほどの『不適応』の結果として考えており、力動的精神医学の治療とは『環境適応の促進』とほぼ同義になっている。

この項目は、前回の記事の続きになっています。



posted by ESDV Words Labo at 03:09 | TrackBack(0) | り:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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