ルイス・マディソン・ターマン(Lewis Madison Terman)
アメリカの心理学者のルイス・マディソン・ターマン(Lewis Madison Terman,1877-1956)は、19世紀のアメリカ心理学会の中心的リーダーであったG.S.ホール(G.S.Hall, 1844-1924)に師事して心理学の学位を取得し、『知能テスト(知能検査)』の研究開発の分野で功績を残した人物である。
L.M.ターマンはインディアナ大学とクラーク大学で心理学を学んだが、ライプチヒ大学への留学やジョンズ・ホプキンズ大学教授を経て、『クラーク大学の初代総長』となったG.S.ホールから直接の指導を受けた。
ターマンはそのキャリアの初期は高等学校教員として過ごし、高校の校長としても務めていた時期があるが、1910年からはスタンフォード大学の教員として心理学の講義を始めている。世界初の科学的な知能検査(知能テスト)は、1905年に精神遅滞児(知的障害時)のスクリーニングを目的として、フランスでアルフレッド・ビネーと医師のシモンに開発された『ビネー式知能検査』だが、ルイス・マディソン・ターマンはこのビネー式知能検査をアメリカ人向けに改良した実績が特に良く知られている。
ビネー式知能検査は1911年に改良されたが、この1911年版のビネー式知能検査では、『3〜15歳までの精神年齢』を測定できるようになったものの、現在にまで至る『知能指数(IQ)』という概念やその計算方法は採用されていなかった。知能指数(IQ:Intelligence Quotient)という概念や計算方法を考案したのは、ドイツの心理学者ウィリアム・シュテルンであるが、これを標準化された知能検査に初めて導入したのが1916年に『スタンフォード・ビネー式知能検査』を作成したルイス・マディソン・ターマンなのである。
『スタンフォード・ビネー式知能検査』では、各発達年齢ごとの能力に対応した問題を作成して、その問題にどのくらい正答できるかどうかで精神年齢(MA:Mental Age)を測定し、精神年齢に対する実年齢(CA:Calendar Age)の比率を100倍することで知能指数(IQ)を算定できるようになった。
知能指数(IQ)は『精神年齢(MA)/生活年齢(CA)×100』の公式で算出することができ、実年齢に見合った平均的な知能水準であればIQ100になるように設計されているが、L.M.ターマンの知能検査の開発がその後の知能検査・性格検査の理論的基盤や応用可能性に与えた影響は非常に大きなものがある。 第一次世界大戦の時には、兵士としての知能の適格性を判定することを目的とした世界初の集団知能検査である『陸軍テスト(army test)』の開発にも携わっている。
L.M.ターマンは知能検査(知能テスト)の関連領域の研究として、『天才児の縦断研究(追跡研究)』を行ったりもしたが、知能以外の分野でもパーソナリティ心理学の研究や恋愛心理学(カップル研究・結婚研究)の研究で一定の役割を果たしている。