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2014年04月20日

[ジョン・デューイ(John Dewey)3:ジョン・デューイの教育思想と道具主義]

ジョン・デューイ(John Dewey)3:ジョン・デューイの教育思想と道具主義

ジョン・デューイは自分の哲学的・思想的な立場をプラグマティズムではなく『道具主義』と呼んでいたが、この名前には経験主義的な学問を道具として実際の社会や生活に役立てていくという意味合いが込められている。デューイは『真理』について『人々にとってより好ましい知識として信じられているもの』と定義し、真理の実際的な社会機能や社会関係における作用のほうを重視して、従来の観念主義的な絶対的な真理(普遍的な理論)という考え方を退けた。

ジョン・デューイ(John Dewey)2:ジョン・デューイの機能主義心理学と分野横断的な著述

デューイの教育理論とも関係する道具主義の基本的な方法論として、失敗や間違いを繰り返しながらより正しいと思われる知識・理解に近づいていくという『可謬主義(試行錯誤主義)』を採用した。人間は技術的・哲学的・社会文化的な実験(試行錯誤)を繰り返すことによって、真理だと人々が信じている知識体系・方法論に接近していくことができるという考え方であり、デューイは『科学的思考・科学的方法』が従来の宗教に代わって人間の善を実現すると考えた。

宗教規範・神よりも科学的思考を重視するデューイの倫理学は、人間の目的を『最も十全かつもっとも自由な形で、自らの力をそれにふさわしい対象のうちに発揮すること』だと定義した上で、人間の善については、『友情・家族・政治的な関わり・機械の経済的な活用、科学、芸術から構成される実用的・道具的なものだ』とした。このような実際的・道具的な人間の人生や社会に役立つ事柄から離れて、道徳的な善が独立的・絶対的なものとして実在するわけではないというのがデューイの道具主義的(プラグマティック)な善悪の分別なのである。

ジョン・デューイの経験主義的な教育思想は、『経験による経験のための経験の教育』『教育活動と社会生活との道具的結合』などと説明されることもあるが、その中心にあるのは“実際に為すことによって学ぶ・自発性を重視する”という『問題解決学習』である。デューイは人間の人生そのものを、『人間が環境に自発的・積極的に関わって問題解決や自己成長を続けるプロセス』だと定義しており、教育の果たすべき役割については『人間の自発的な成長や積極的な問題解決を促すための環境を整えること』だとした。

ジョン・デューイは学校について『受動的に知識を学ぶ場』ではなく『問題解決をすべき社会生活の場』だと認識していて、『知識』は問題解決の過程において手段として学ばれるべきものに過ぎないと考え、行動の変容は外的な強制ではなく自発的な学習によってもたらされなければ意味がないとした。

デューイは学校の擬似的社会生活において、自分の学習行動の結果や意味を理解して予測することの大切さを説き、その理解と予測が生徒の自発的な『セルフコントロール(自己制御能力)』を高めるのだとした。また、セルフコントロールや自己指導能力を高めていくことが学校教育の主要な目的なのだとして、そのためのガイダンスをまとめることを教育学の課題に設定したりもした。

デューイは民主主義を維持するための要素として、『学校』『市民社会』の二つが民主主義の根本要素になると考え、実験的な知性と多元性(plurality)の再構築によって民主的な世論の基盤が維持されるとした。完全な民主主義の実践のためには、国民・市民、専門家、政治家たちの緊密なコミュニケーションに基づく『十全な形での世論』『公共圏における議論』が必要だという主張もしている。

posted by ESDV Words Labo at 06:46 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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