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2014年04月21日

[J.M.デュセイ(John M. Dusay)]

J.M.デュセイ(John M. Dusay)

アメリカの精神科医で心理療法家のJ.M.デュセイ(John M. Dusay,1935-)は、交流分析(TA:Transactional Analysis)を創始した精神科医エリック・バーン(Eric Berne,1910-1970)の高弟である。

J.M.デュセイは、5つの自我状態を前提とした交流分析の性格分析テストとコミュニケーション分析のテストである『エゴグラム(egogram)』を開発した人物として知られている。J.M.デュセイはエゴグラムを開発した功績によって、『エリック・バーン記念科学賞』を受賞している。

交流分析では人間(自我)の持つ精神機能のことを『自我状態』と呼んでいるが、自我状態は『その人を特徴づける思考・認知・感情・行動の類型化されたパターン』でもある。エゴグラムの心理テストで前提にされている5つの自我状態は以下のようなものである。

CP(Critical Parent:批判的な親)……厳格な規範意識や支配的なリーダーシップ、権威主義的な審判、社会・世間の価値観を感じさせる自我状態。CPが強すぎると支配的で抑圧的な言動が起こりやすいが、CPが弱すぎると自分に自信がなくなったり、社会・常識への適応が難しくなったりする。

NP(Nurturing Parent:養育的な親)……他者に対する優しさ・寛容さや情緒的な人間関係、人との助け合いを重視する自我状態。NPが強すぎると自己犠牲的な援助や奉仕をしてしまいやすいが、NPが弱すぎると他人への優しさや思いやりの弱い共感性の乏しさが目立ちやすくなる。

A(Adult:大人)……感情に左右されない客観的な現実認識や功利的な現実適応能力(損得計算)と対応している自我状態。A(大人)は精神機能のバランスを維持する働きもしていて、CP(批判的な親)とNP(擁護的な親)の競合やFC(自由な子ども)とAC(適応的な子ども)の葛藤を調停している。Aが強すぎると冷淡でドライな価値判断・損得勘定をしやすくなり、Aが弱すぎると損得の絡む現実社会に適応しにくくなったり、自分の立場や人間関係を守れなくなってしまう。

FC(Free Child:自由な子供)……自由な楽しい行動選択や率直な感情表現と関係している自我状態。FCが強すぎると、社会規範に違反して反社会的な行動(非行・犯罪)に走りやすくなったり、他者の迷惑や感情に配慮できなくなってしまうことがある。FCが弱すぎると、自由な精神を発揮する創造力が低下したり人生を楽しめなくなったり、精神的なストレスや不平不満を溜め込みやすくなる。

AC(Adapted Child:順応した子供)……権威主義的な価値観や社会の基本的なルール及びマナーに従順に従おうとする自我状態。ACが強すぎると、社会的・常識的に見て模範的な優等生として評価されやすくなるが、自分の意見・感情を抑圧し過ぎてメンタルヘルスを崩しやすくなる。ACが弱すぎると、社会のルールやマナーに違反しやすくなり、他者に迷惑を掛けてしまったり社会環境(集団行動)に上手く適応できなくなることがある。

エゴグラムの性格分析テストでは、5つの自我状態(心の状態)の強弱のパターンを見ることで人間の性格特徴を理解するが、『自分の自我状態』と『相手の自我状態』との間でやり取りされるメッセージや行動・態度を分析することでコミュニケーションの特徴や問題点を知ることもできる。エゴグラムでは、相手や状況によってどの自我状態が優勢になりどの自我状態が劣勢になるのかを特定しながら、それぞれのコミュニケーションの分析と有効な改善方法の検討をすることができる。

J.M.デュセイは1976年に九州大学の心療内科学教授であった池見酉次郎(いけみゆうじろう)の招待で来日して講演活動を行ったことがある。J.M.デュセイの妻であるキャサリン・デュセイも心理療法家として活動した。デュセイのエゴグラムの心理テスト(性格分析テスト)の理論と技法は、心理劇(サイコドラマ)のJ.L.モレノ(J.L.Moreno)や実存主義のロロ・メイ(R.May)、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ(F.Perls)などにも大きな影響を与えることになった。

posted by ESDV Words Labo at 13:28 | TrackBack(0) | て:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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