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2014年05月16日

[ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):1]

ロボトミー(lobotomy)とエガス・モニス(E.A.Moniz):1

ロボトミー(lobotomy)は、重症の精神疾患を脳に対する外科的手術で治療・改善しようとする『精神外科』の分野で行われていた侵襲的な外科手術である。ロボトミー(lobotomy)という言葉は、脳・肺などの器官を構成する大まかな単位である『葉(lobe)』を切除するという意味である。“tomy”『切断・切除』といった意味であり、ロボトミー手術の正式名称は“prefrontal lobotomy(前部前頭葉切截術)”である。

ロボトミーという言葉には、人間の精神活動を停止させて『ロボット(robot)』のようにしてしまう脳外科手術といった意味合いはないが、ロボトミーを人間のロボット化を進めるための手術と解釈する類の誤解も多く見られた。しかし、ロボトミーを実施された患者は実際には、ロボットのように『無感情・無気力・無感動な精神状態(自我の希薄化・意志の脆弱化・気力の衰退化)』になってしまう事も多く、人間をロボット化する手術というアナロジー(類比)はあながち間違いでもなかった。

ロボトミー手術(前頭前葉白質切截術)の実施は、1935年にポルトガルの神経科医エガス・モニス(E.A.Moniz, 1874-1955)と外科医ペドロ・アルメイダ・リマ(Pedro Almeida Lima)が、リスボンのサンタマルタ病院において統合失調症が悪化した精神疾患の患者に対して執刀したのが始まりとされる。

エガス・モニスのロボトミー手術より前に、同1935年、神経医学の研究者のジョン・フルトン(John Fulton)とカーライル・ヤコブセン(Carlyle Jacobsen)がチンパンジーの前頭葉切断実験を行っているが、その時には興奮して暴れているチンパンジーの性格・気質が穏やかになる効果(衝動性・行動力・自発性の著しい低下)が認められていた。

前頭葉内部の『シナプス結合繊維群の異常な情報伝達(刺激性の情報伝達)』によって統合失調症や精神病質、性格異常が発症して維持されるというのが、エガス・モニスの精神病理学仮説であった。E.モニスはこの仮説に基づいて、前頭葉を脳のその他の部分から切除することで精神疾患・性格異常を改善しようとする前頭前葉切截術(ロボトミー手術)が実施されたのである。

1935年にロボトミー手術を人間の患者に対して実施したエガス・モニス(当時60歳)が、ロボトミーの創始者とされているが、実際には類似の精神外科的な脳の手術(荒療治の脳組織の切除)が、神経外科医(精神外科医)のG.ブルクハルト(G.Burckhardt,1888)W.E.ダンディ(W.E.Dandy,1922)によって行われていた。

1949年にエガス・モニスは、ロボトミー手術の考案の業績によって『ノーベル生理学・医学賞』を受賞している。だが、その後のロボトミー手術の副作用・弊害による人格変化(人格荒廃・人間性の減衰)に苦しんだ患者のことを考えると、このモニスのノーベル賞受賞が妥当だったのかは現代の人道的な観点からは疑問だろう。



posted by ESDV Words Labo at 23:31 | TrackBack(0) | ろ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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