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2014年05月17日

[カール・ロジャーズとマルティン・ブーバーの対談]

カール・ロジャーズとマルティン・ブーバーの対談

オーストリアの宗教哲学者・文学者のマルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)の実存主義的な哲学は、『我−汝(われ−なんじ)の対話の哲学』と呼ばれるが、自己理論に基づくクライエント中心療法を考案したカール・ロジャーズは1957年にこのM.ブーバーと対談したことがある。

M.ブーバーの対話の哲学とは“我(Ich)”“汝(Du)”が語り合うことによって世界が拓けるというものだったが、『ブーバーの我』は『ロジャーズの汝』を受け止めて理解しながらも、ロジャーズの『自己理論の人間観』についてはどちらかというと批判的に捉えたようであった。

M.ブーバーはカール・ロジャーズの実現傾向や有機体的成長を軸とする人間観が、M.ハイデガーなどの実存主義でいうところの『世界内存在としての人間(person)』ではなく、自己と他者の境界を区別して(我と汝の対話を困難にしてしまって)独立的に存在する『個人(individual)』に近いということで批判的な対談の姿勢になったようである。

人間が本音と本音で交流し合うことによって心理的な回復効果を得られるエンカウンターでは、『物理的な他者との出会い』ではなくて、『人間的な他者との出会い』が目指されるが、この人間的な温かみや内面を持っている他者(我が自分と対等な価値を持つ人間として向かい合っている他者)というのが『汝(Du)』である。

マルティン・ブーバーは科学的な知識や実証的な理論は『それ(ich)』というよそよそしい存在に留まっているので、『我』が『それ(内面・温かみ・生命感を持たないもの)』にいくら熱心に関わったとしても、我は疎外感や孤独感から抜け出せずに虚しさを味わうことになると述べた。

故に、ブーバーの対話の哲学が目指しているのは、『我‐それ(Ich-Es)の関係』から『我‐汝(Ich-Du)の関係』への実存的な転換であり、『相手をモノ的に取り扱うだけのモノローグ(独語)』から『相手を対等な人間と認識して語り合うダイアログ(対話)』へと移行していくことなのである。ユダヤ神秘主義やドイツ神秘主義の影響を受けていたブーバーは、我と汝の間の対話(ダイアログ)が成り立つ時には『永遠の息吹(生命感)』が感じられると考え、世俗の日常生活の中で他者と誠実に向き合う態度の大切さを強調していた。

posted by ESDV Words Labo at 02:08 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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