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2014年06月05日

[A.S.ニイル(A.S.Neill):2]

A.S.ニイル(A.S.Neill):2

A.S.ニイルは1912年にイギリスのスコットランドにあるエディンバラ大学で教育学の修士号を取得しており、1914年にはスコットランドのグレトナ・グリーンスクールの校長に就任した。ドイツの教育改革運動の影響を受けて、1921年にドイツのドレスデン郊外のヘレナウに学校を開設したが、1923年にはイギリスの南イングランド(ライム・レギス)に戻って、『サマーヒル・スクール』の原型となるフリースクールを創設している。

A.S.ニイル(A.S.Neill):1

A.S.ニイルが学校教育の最大の目標としたのは、『子供の幸福(大人に成長してからも幸福感と主体的な意欲を実感できる人格基盤)』であり、S.フロイトの精神分析の影響も受けていたニイルは、学校教育を介して『児童期の子供のトラウマ(自分は自由に主体的に生きてはならない存在であるという自己否定的・権威主義的な認知)』が形成されることを警戒していたともいう。

神経症(不安障害)やうつ病をはじめとする大人のメンタルヘルスの悪化の原因は、『児童期の自由の剥奪・主体性と意欲の阻害・責任感の欠落(ただ学校や教師の命令に従順に従って勉強し、ルール違反・問題行動を起こさなければ良いという考え方)』にあると考えたニイルは、規律や権威、常識、成績によって子供を統制して区別する伝統的な学校教育の有効性を懐疑した。

ニイルは生徒たちの人格・意志・選択を『一人の人間』として尊重し、教師と生徒の双方が平等な一票の権利を持つ集会を開いて徹底的な話し合いを行った。そして、議論・投票による『民主的・自治的な学校運営』によって、みんなが納得して従えるような学校の最低限のルールや目標を設定しようとした。

一方、伝統的な学校教育の統制的な秩序・風紀を支持する教育者・世論からは、『未熟で判断力に劣る子供の意見をいちいち聞く意味などない・生徒に自由を認めすぎると増長してわがままになり秩序が維持できなくなる・授業に出ても出なくてもいいならみんなが教室から出ていってしまう・学校は規則のある不自由な環境の中で社会のルールや厳しさを学んでいく場である・フリースクールは生徒の生活態度や規範意識の育成に対して無責任である』といった反論や非難がニイルの自由教育の思想・理念に対して寄せられたりもした。

しかし、ニイルの唱えた子供の自由というのは『やりたいことだけをする自由・わがままや放蕩無頼の自由』ではなくて、『自分の行動や選択に対する責任を自覚する自由』であり、『主体的な学校自治や自己統制(セルフコントロール)』を実現するための自由である。

子供たちは『自律的な責任主体』として定義されているために、大人とほぼ同等の自由や権利を保障されているのであり、ニイルの自由教育は子供にやりたい放題させて甘やかす自由ではないことに注意が必要である。自由教育における生徒の自由は、学校の社会的・運営的な側面としての『自治』、学校の個人的・態度的な側面である『自律』によって構成されており、生徒それぞれが『民主的な自治・責任感のある自律』を実践することによって人間の自由な生き方に実質的な価値が生まれる。

posted by ESDV Words Labo at 06:36 | TrackBack(0) | に:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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