ロバート・ジェイムズ・ハヴィガースト(Robert James Havighurst)と発達課題:2
R.J.ハヴィガーストは、『乳幼児期・児童期・青年期・壮年期・中年期・老年期』の発達課題を以下のように細かな項目に分類して詳しく整理している。しかし、社会的性差であるジェンダーの無条件の内面化や男らしい(女らしい)行動の学習が前提にされている部分など、現代の先進国のジェンダーフリー・個性教育と対立的な発達課題もある。20世紀半ばの時代背景も踏まえて、『男性の正規雇用の就職・ほとんど義務的な女性の結婚と出産』が前提にされていたりもする。
ロバート・ジェイムズ・ハヴィガースト(Robert James Havighurst)と発達課題:1
乳幼児期の発達課題
1.歩行の学習
2.授乳から固形食(離乳食・一般食)への移行
3.言葉の学習
4.大小便の排泄行為の自律(統制)とトイレトレーニングによる習慣づけ
5.男女の性差と性の恥じらいの学習
6.生理的安定の獲得
7.社会や物事についての単純な概念と理解の形成
8.両親・兄弟姉妹をはじめ、他人と自分との情緒的な結びつき
9.善悪・正誤の大まかな分別と良心(思いやり)の発達
児童期の発達課題
1.同世代との遊び・スポーツに必要な身体的能力・技能の習得
2.自分と日常生活に対する健全(前向き)な態度形成
3.同世代の子どもとの友達関係・協調性の学習
4.男子・女子としての役割の学習
5.読み・書き・計算の基礎学力の習得
6.日常生活に必要な概念と物事の理解の発達
7.良心、道徳観念、規範意識、価値の尺度の発達
8.自分と他人は異なる人格であるとする人格の独立性の意識化
9.社会的集団や学校・病院など公的機関に対するふさわしい態度の発達
青年期の発達課題
1.同世代の男女との適応的な新しい関係(友情・恋愛)の構築
2.男女の身体構造の違いの理解および男性・女性としての性別役割(生物学的機能差)の認識
3.両親・他の大人からの情緒的自立
4.経済的社会的自立に関する能力と自信の獲得
5.職業選択とそのための準備
6.結婚・家庭生活の意識とそのための準備
7.市民的資質(政治参加)に必要な『政治・経済・法律・社会・地理・思想・倫理』などに関する知的能力・概念・理解を発達させること。
8.社会的責任を果たすための行動の達成
9.自分の世界観・倫理観の確立と他者との調和の達成、行動規範となる価値体系の獲得
壮年期の発達課題
1.結婚する配偶者の選択
2.配偶者との協力的な家庭生活
3.出産・育児による新たな家庭生活への適応
4.子どもの養育・教育
5.家庭環境の維持管理
6.就職(所得確保)と経済生活の維持管理
7.家庭生活以外の市民的責任の自覚と負担
8.家族・就職先以外の適切な社会集団の発見と参加
中年期の発達課題
1.自立した大人としての市民的義務の履行と社会経済的責任の達成
2.自立可能な経済的生活水準の確立と維持
3.信頼できる大人になること、若者と子供たちの指導・援助に努めること
4.余暇・教養・娯楽の活動の充実
5.円満な家庭生活と配偶者との結びつきの強さ
6.中年期の生理学的変化や身体的衰え、社会的役割の変化への適応
7.老年期の両親の介護・対応への適応
老年期の発達課題
1.身体的な衰えと健康の衰退(病気の発生)への適応
2.職業生活からの引退と経済的に厳しい年金生活(あるいは高齢者雇用)への適応
3.配偶者の死(深刻な対象喪失)への適応
4.同世代の高齢者たちとの人間関係への適応や友達づくり
5.老年期の心身の衰退・対象の喪失(自他の死)・各種リスクに対する備え
R.J.ハヴィガーストは、“Developmental Tasks and Education”(邦訳『人間の発達課題と教育 玉川大学出版部 1995年』)という著作で、人間の各発達段階における発達課題の意義と教育活動の可能性について論じている。