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2014年06月19日

[エーリッヒ・ノイマン(Erich Neumann)]

エーリッヒ・ノイマン(Erich Neumann)

エーリッヒ・ノイマン(Erich Neumann,1905-1960)は、ベルリン生まれのユダヤ系ドイツ人で、主にイスラエルのテルアビブで活動した『ユング派(分析心理学)』の独創的な心理学者である。カール・グスタフ・ユングの最も有力な弟子であり、ユングの無意識の心理学の後継者になると目されていたが、ユングよりも早くこの世を去ってしまった悲運の人でもある。

1927年にエアランゲン大学でPh.D.(哲学博士号)を取得して、1933年にベルリン大学で医学の国家試験に合格したが、この時期には女性哲学者のハンナ・アーレントの思想に共鳴して哲学的・政治的な分野の研究・思索活動も精力的に行っていた。1933年にスイスに移ったノイマンは、1934年までの約一年間、分析心理学のカール・グスタフ・ユングに師事してイメージ(魂)の心理学へと発展していく深層心理学の教えを受けている。

1934年に、ナチスドイツのユダヤ人迫害の脅威を感じたノイマンは、当時イギリス委任統治領だったパレスチナへ移住することを決めて、テルアビブで精神科医として開業することになった。1928年には精神分析家・外科医のユーリエ・ブルーメンフェルト(1905-1985)と結婚しており、その間に2人の子供も設けている。1948年から1960年にかけて、世界中から知識人や思想家、科学者を集めて開催されるエラノス会議(賢人会議)に招聘され続け、合計で14回もエラノス会議に参加したという。

エーリッヒ・ノイマンは人間の自我や意識がどこからやって来るのか、人間の普遍的無意識(集合無意識)の起源や意味はどこにあるのかを、自身のスピリチュアルな経験に基づいて探求し続けたユング派の精神分析家であり、目に見えない精神現象やイメージの世界を研究したことから『魂の心理学者』と呼ばれることもある。

ジークムント・フロイトは人間の無意識を過去の受け入れがたい欲求・記憶が抑圧された『個人的無意識』として捉え、カール・グスタフ・ユングは個人的無意識を越えて集団・民族・人類にイメージ(元型)として共有される『集合無意識(普遍的無意識)』が存在すると考えた。

エーリッヒ・ノイマンはユング心理学の集合無意識の概念を更に拡張して、個人(人間)が集合無意識にアクセスするのではなく、不定形の“魂(ソウル)”が包摂されている広大な無意識の中に個人(人間)の意識があるという考え方をしている。ノイマンの想定する“魂(ソウル)”は、個人が所有する意識や無意識とは異なり、広大無比な無意識の領域から生み出されてくるものであり、人間個人はその人類の意識をすべて包含している無意識の部分的な現れに過ぎないというのである。

E.ノイマンの主著は『意識の起源史(1949)』であり、人間の意識の発達プロセスとその根底的な起源に関する理論体系を構築して、深層心理学と元型イメージの諸段階との相関関係を明らかにする個性的な功績を残している。ノイマンは“魂(無意識)”に触れるような自己超越的な意識の発達を遂げることができれば、人類は民族・国家・文化・経済・家庭などの分野の深刻な問題を自発的かつ効果的に解決できるという幻想的な処方箋を呈示している。

『意識の起源史』の邦訳書は1984〜1985年に出版されているが、女性の元型や歴史的な女性原理の変遷にも学術的興味を持っていたノイマンは『グレートマザー(1955年)』という著作も残している。現代では、アセスメントや統計学を駆使するエビデンス・ベースドな科学的心理学が主流になっているが、E.ノイマンの無意識や魂の世界を瞑想的・内省的に探求する心理学は、そういった現代の心理学の研究手法や価値観とは対極的なものになっている。



posted by ESDV Words Labo at 14:38 | TrackBack(0) | の:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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