ウェブとブログの検索

カスタム検索





2014年07月22日

[ウィリアム・ヒーリー(William Healy)]

ウィリアム・ヒーリー(William Healy)

アメリカの精神科医であるウィリアム・ヒーリー(William Healy,1869-1963)は、力動的心理学(精神分析)の立場から『少年の非行問題の心理的要因・非行問題への対処法』を専門的かつ実践的に研究した。特に、ウィリアム・ヒーリーは少年の非行問題を『ケーススタディ(事例研究)』によって理解しようとした。

具体的には、少年の各種の非行行為を『事例(ケース)』として取り上げ、その社会的・文化的・家族的要因を詳しく考察しながら、どうしてそのような非行を少年がするのかを『心理力動(心的エネルギーの葛藤)』の観点から分析したのである。

力動的心理学(精神分析)のパラダイムに依拠したウィリアム・ヒーリーの非行理論は『力動的非行理論』と呼ばれる。ヒーリーは少年が非行(反社会的行動)に駆り立てられる要因を『家族関係の歪みによる情動障害』にあると考えていたので、力動的非行理論は『情動障害理論』と呼ばれることもある。

少年非行は、家族関係や学校生活の中で満たされなかった感情(愛情・承認・親和の欲求)をどうにかして満たそうとする自己表現行為の不適応な変形であり、生命活動(生命エネルギー)の流れの歪みであるとした。ヒーリーは少年非行を形成する基本的要因を『家族関係の対立・葛藤・孤独(家族による自己価値の否定)』にあると見て、そこに非行少年同士の観察学習(社会的学習)や非行への勧誘・誘惑が加わることで非行(反社会的行為)が行われやすくなるとした。

家族関係の中で満たされない感情・欲求によって生まれる『情動障害』が非行の基盤にあり、その情動障害を家族カウンセリング(家族療法)などで治療することが、『非行の減少・解消』につながると考えていた。

ウィリアム・ヒーリーは、1909年に『シカゴ少年精神病研究所』を設立して、『非行少年の審判・補導・矯正教育』に関係する科学的知見の基礎を築いていった。邦訳書に樋口幸吉訳の『少年非行(現代科学叢書)』があるが、ウィリアム・ヒーリーの代表的著作として“The Individual Delinquent(1915)”がある。

posted by ESDV Words Labo at 16:20 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。