ドナルド・H・ブラッカー(Donald H. Blocher)とスクールカウンセリング:1
アメリカの心理学者・カウンセリング心理学者であるドナルド・H・ブラッカー(Donald H. Blocher,1928-)は、学校の教育相談(スクールカウンセリング)や発達臨床カウンセリングに応用することのできる『開発的カウンセリング(Developmental counseling)』を考案したことで知られる。
日本では1972年(原著は1966年)に、ドナルド・H・ブラッカーの『開発的カウンセリング(国土社)』が中西信男・神保信一の共訳で出版されている。洋書では、“Counseling: A Developmental Approach”や“The Evolution of Counseling Psychology”、“The Professional Counselor”をはじめとして多数のカウンセリング心理学の理論や技法、事例研究(ケースワーク)の書籍を出版している。
ブラッカーの『開発的カウンセリング』の特徴は、『クライエントの潜在的な能力・課題への適性・成長の可能性』を心理教育的なアプローチを通して発達させていくというところにある。クライエントの潜在的資質を開発する『開発的カウンセリング』とクライエントの問題点を修正しようとする『矯正的カウンセリング』は対照的な対人援助の手法であり、それぞれのカウンセリングの特徴の違いは以下のようなものになる。
開発的カウンセリング……開発的(クライエントの潜在能力を開発する)・教育的(カウンセリングは医療ではなく全ての人を対象にする教育である)・予防的目標(問題や病気を起こしている人だけではなく、その前段階で予防することを目的にしている)
矯正的カウンセリング……矯正的(クライエントの問題を技術的に矯正しようとする)・適応的(既存の学校や社会の環境にクライエントを適応させようとする)・治療的結果(カウンセリングを医療モデルで捉えて精神疾患や問題行動を治療しようとする)