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2014年08月27日

[マレー・ボーエン(Murray Bowen)の多世代派家族療法]

マレー・ボーエン(Murray Bowen)の多世代派家族療法

アメリカの精神科医・家族療法家であるマレー・ボーエン(Murray Bowen,1913-1990)は、『現代的な核家族の精神分析』ではなく『多世代家族(直系家族)の精神分析』を専門にしていたセラピストである。M.ボーエンは1950年代の家族療法の黎明期に活躍したセラピストであり、ボーエンの家族システム論を前提にした家族療法は『多世代派家族療法』と呼ばれている。

M.ボーエンははじめ統合失調症(schizophrenia)の患者とその家族との歴史的な関係性を研究する中で、多世代派家族療法のシステム論を形成していった。家族成員のそれぞれが相互に影響を与え合いながら『一つの家族という機能的な集団(=システム)』を作り上げているという前提がある。そして、家族で共有されている過去の歴史も、家族メンバーの行動・心理状態に大きな影響を及ぼしているという仮説である。

家族のメンバーは『感情の単位』でもあるが、家族システムはそれぞれの家族メンバーの感情・要求を基調とした『力関係(相互作用)』によって成り立っていると考えられている。家族のメンバーにはそれぞれに役割・立場があるのだが、誰かが身体や精神の疾患によってその役割(立場に応じた責任)を果たせなくなった時には、『他の家族メンバーの補償的・代替的な行為』によってカバーされることになる。家族はそういった支え合いや代理行為といった相互作用によって、感情システムとしての家族システムを確立して維持しているのである。

ボーエンの多世代派家族療法では、その家族に代々受け継がれてきた『精神的な問題点・家族の秘密・コミュニケーションのルール・力関係のダイナミックな影響』などを話題の対象にして、家族にある『慢性的な不安(chronic anxiety)』をできるだけ解消しようとする。

この慢性的な不安というのは、世代を超えて歴史的に他の家族(子・孫)へと無意識的に伝達されている不安でもあり、この慢性的な不安を解消していくために『家族で共有されている歪んだ秘密・ルール』などを言語化・明確化して変えていかなければならないのである。

ボーエンの多世代派家族療法では、この問題解決のプロセスを『歪んだ家族関係からの自立・自由』という観点で捉えており、家族メンバーに自我が芽生えて家族の同調圧力よりも自己を尊重する心理が強まることで、『個人の分化(differentiation of self)』が進展していくのである。

多世代派家族療法の治療メカニズムの一つは、両親と子供(あるいは祖父母・孫も含む)の典型的な『三角関係』からの『個人の分化(differentiation of self)』であり、家族の負の歴史や理不尽な力関係に自分が巻き込まれないようになること(自我の自立)なのである。

家族の一方的な同調圧力や歪んだ歴史(ルール)の強制から自由になること、自己の意思・目標・欲求を尊重できるようになることが『個人の分化』であるが、個人がどれくらい分化していくのが望ましいのかはそれぞれの家族の状態やメンバーの希望によって異なってくるだろう。 家族システムで生成される『感情の磁場』に拘束されずに『理性的・倫理的な判断』ができるようになることが家族療法の目標になっている。更には、『家族の負の歴史の連鎖(歪んだルールや常識の継承)』を自分の代で終わらせることによって、子孫を苦しませるリスクが減るという副次的なメリットもある。

家族からの分化のレベルが低すぎると、『家族の負の歴史の連鎖(歪んだルールや常識の継承)』に飲み込まれやすくなってしまう。その結果、友人・上司・同僚・知り合いなどとの人間関係でも、感情の磁場に引き寄せられて『理不尽な役割・立場』を強制されているようなストレスが生じる。過剰なストレスを感じ続けることによって、うつ病や社会不安障害(対人恐怖症)、パニック障害などのメンタルヘルスの悪化も併発してしまうのである。



posted by ESDV Words Labo at 02:30 | TrackBack(0) | ほ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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