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2014年08月27日

[ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)]

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)

イギリスの児童精神科医・精神分析家のジョン・ボウルビィ(John Bowlby,1907-1990)は、精神分析の訓練を受けているが、精神医学の研究を動物行動学(エソロジー)の観点から行った人物でもある。ジョン・ボウルビィに対して教育分析(スーパービジョン)や精神分析の臨床の指導を行ったのは、メラニー・クラインアンナ・フロイトであった。

J.ボウルビィは初め、英国独立学派を創設して対象関係論を論じていたメラニー・クラインに教えを受けて、その後に自我心理学のアンナ・フロイトに師事している。ケンブリッジ大学で心理学などを学び、ユニヴァーシティカレッジ病院で医学を学んで、1933年に医師免許を取得して精神科医としてのキャリアを歩み始めた。

モーズレイ病院の精神科で臨床を行いながら、ジークムント・フロイトの精神分析やメラニー・クラインの児童分析に発達心理学的な視点からの関心を持つようになり、1936年にロンドン児童相談所で精神分析家としての経験を積んだ。1937年に精神分析家の資格を取得して、M.クラインやアンナ・フロイトに教えを受けたのである。第二次世界大戦中に軍医として活動しながら、タビストック・クリニックに児童精神分析部門を立ち上げる業績を残している。

1945年頃には、タビストック・クリニックの副所長に就任しているが、ジョン・ボウルビィの有名な『愛着理論(attachment theory)』は、1950年代のイタリアにあった孤児院・乳児院で起こった『施設病(ホスピタリズム)』の実態調査・実証研究に基づいて提唱されたものであった。

第二次世界大戦が終わって間もないイタリアの孤児院・乳児院に収容された戦災孤児たちには『発達・発育の遅れ(身長の低さや体重の少なさ)・罹病率・死亡率の高さ・適応不良』などの施設病の問題が発症していた。戦災孤児たちの悲惨な状況を目の当たりにしたJ.ボウルビィは、乳幼児期の発達早期における『母親の愛情・世話と子供の心身の健康性との間の深い関わり』について論文で発表したのである。

新生児が自分にとって最も親密であるべき母親を失い、慣れない新しい環境(不安・不足の多い環境)に移されると、母性的な愛情・保護を得られないことが原因で『施設病(ホスピタリズム)』を発症しやすくなってしまう。施設病の子供は、心身の発達の遅れが見られたり、抵抗力が低下して怪我の治りが遅かったり、免疫力が落ちて感染症(風邪)に罹りやすくなったりしてしまうが、J.ボウルビィはこの原因を『母性的養育の剥奪(deprivation of maternal care)』に求めたのだった。

母性的養育の剥奪は、発達臨床心理学では『母性剥奪(mother deprivation)』と呼ばれることも多い。ジョン・ボウルビィやルネ・スピッツが母性剥奪の概念を提唱したことで、世界保健機関(WHO)が親を亡くした・親がいない子供たちのための福祉プログラムに着手していく流れが生まれたとも言われている。

アタッチメント(attachment)と呼ばれる愛着は、乳幼児期に形成される『情緒的な深い結びつき』のことだが、親子間(子供と養育者の間)でアタッチメントが形成されることは、乳幼児の精神の安心感・信頼感の獲得(乳幼児期の発達課題の達成・将来の自我の安定した基盤づくり)のために必要なことなのである。

この愛着理論(アタッチメント理論)を発想した背景には、動物の刷り込みや子育てなどのコンラート・ローレンツやニコラス・ティンバーゲンの動物行動学(エソロジー)の視点があったとされる。1950年に世界保健機関の精神保健コンサルタントに就任したボウルビィは、『精神医学とエソロジーの融合』という生物学的知見を根拠にする科学的精神医学の発展を目指していたようである。

posted by ESDV Words Labo at 03:34 | TrackBack(0) | ほ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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