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2014年11月24日

[ウィルヘルム・グリージンガーの単一精神病論とエミール・クレペリンの精神医学教科書:1]

ウィルヘルム・グリージンガーの単一精神病論とエミール・クレペリンの精神医学教科書:1

19世紀ドイツを代表する精神科医のウィルヘルム・グリージンガー(Wilhelm Griesinger,1817-1868) は、中世から近世にかけての『オカルティックな精神病解釈(悪魔の影響・悪霊の憑依・魔女狩り)』を否定して、『身体的原因(脳の機能的障害)』を強調する精神病論を唱えた。

ドイツのシュトゥットガルトに生まれてチュービンゲン大学とチューリヒ大学で医学を学んだグリージンガーは、精神科医として活躍しただけではなく内科医としても働いていた。特に、コレラやチフス、ペストといった当時流行していた感染症の理論・治療に精通した内科医であり、感染症の臨床と研究の分野でも成果を残していたという。約2年間ほど精神科医として勤務していたウィンネンタール精神病院での臨床経験を元にしてまとめられたものが、主著『精神病の病理学および治療法(1845)』である。

ウィルヘルム・グリージンガーの有名なテーゼに、『精神病は脳病(身体疾患)である』という脳還元主義的(身体主義的)なテーゼがあるが、グリージンガーは精神病理学を『医学モデル(脳科学モデル)』に転換させることで、それ以前の『哲学的な思弁・オカルティックな迷信』といった精神主義を排除したのである。グリージンガーは1867年のドイツの精神医学会の創設者でもあるが、精神病理学の分野では自然科学的な方法論(=主観的な思弁・理念に依拠しない現象と事実の客観的な記述)を基盤とする医学モデルの導入を企図した。

精神の病気・異常に『身体的原因』があると推測する医学モデルの起源は、古代ギリシアの医師ヒポクラテスや古代ローマの医師ガレノスの『四大体液説(体液気質理論)』にまで遡ることができる。四大体液説(体液気質理論)とは、人間の体内を流れる体液の種類(血液・粘液・胆汁・黒胆汁)とその比率によって、基本的な性格パターンとその特徴(多血質・粘液質・胆汁質・憂鬱質)を分類したものである。

グリージンガーは、精神疾患の本態を脳内の器質的・機能的な異常に求める『身体因性』を強調したが、それと合わせて遺伝・体質・気質といった特定不能な要因を重視する『内因性』の病理学も発展した。『精神病は脳病である(Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten)』と語ることで、精神疾患の身体因性を指摘したが、脳機能における『反射作用の乱れ』によって精神障害が発症するという仮説を持っていた。

グリージンガーは『単一精神病説(Einheitspsychose)』を提示したことでも知られるが、単一精神病説というのは、さまざまな心身症状を見せる各種の精神疾患の本体はただ一つの精神病に還元できるとする仮説である。単一精神病の原因は、脳の器質的障害や機能的異常にあるので、精神病の原因を解明して効果的に治療するためには『脳神経科学(脳病理学)の進歩』を待つしかないとした。



posted by ESDV Words Labo at 05:00 | TrackBack(0) | く:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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