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2014年12月08日

[フルールノアとエレーヌ・スミスのヒステリー研究2:ヒステリー(失神・妄想)と幻想的な願望充足]

フルールノアとエレーヌ・スミスのヒステリー研究2:ヒステリー(失神・妄想)と幻想的な願望充足

フルールノアは、時代を超えて様々な人物の霊媒になることができるという心霊術師エレーヌ・スミスの研究を行って、失神して霊に憑依されている状態が『無意識的かつ幻想的な願望の充足』と関係していることを発見した。

フルールノアとエレーヌ・スミスのヒステリー研究1:霊媒師・心霊術師のトランス状態

貧しい雑誌の売り子であったエレーヌ・スミスは、心霊術師として霊媒を行っている時にはフランス(ブルボン王朝)の女王マリー・アントワネットや19世紀インドのシマンディーニ女王になったりした。こういった特別に高貴な身分や裕福な家柄の女性の霊魂が自分に乗り移ったように感じることが、エレーヌ・スミスの現実の貧しくて惨めな人生を忘れさせてくれる幻想的な願望充足として機能しているというのである。

幻想的な願望充足の内容になっている人物やエピソードの起源(材料)について、フルールノアはエレーヌ・スミスの今までの読書体験に基づく知識や本人も忘れている幼児期の記憶・欲求にあるとした。フルールノアのインタビュー形式の心理面接を受けていたエレーヌ・スミスは、フルールノアに対して恋人のような『陽性転移感情』を感じるようになってしまう。

エレーヌ・スミスがインドのシマンディーニ女王になりきっている心理状態の時には、精神科医であるフルールノアを夫のシブルーメ王として扱っていたという。エレーヌは死んだ夫であるシブルーメ王を火葬に付す場面をイメージしながら、自分もその火の中に飛び込んで殉死するような儀式・演技を繰り返し行っていたが、こういった象徴的な儀式行為も『エレーヌ・スミスの幻想的でロマンティックな恋愛願望の抑圧』に起源を持つものだと推測された。

こういった霊媒や心霊の心理状態を題材にした『転移感情(transference affection)』の典型例は、その後のジークムント・フロイトの精神分析における転移感情の分析方法にも一定の影響を与えている可能性がある。

この霊媒行為におけるトランス状態が『無意識的かつ幻想的な願望の充足』に関係しているという発見は、精神分析の無意識の理論や夢解釈の技法にもつながるような画期的な発見である。更に、フルールノアの弟子であるカール・グスタフ・ユングは『霊媒・心霊・オカルト』の分野にも強い関心を寄せていたことで知られる。ユングは普遍的無意識(集合無意識)の人類に共通するイメージが、霊媒や心霊によるトランス状態に反映されることがあるという仮説を考えたりもした。

posted by ESDV Words Labo at 17:31 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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