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2014年12月19日

[アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1]

アメリカの力動精神医学(dynamic psychiatry)の歴史と特徴:1

ジークムント・フロイトが創始した精神分析は、はじめオーストリアのウィーンを拠点として次第にヨーロッパ全土へと拡大していった。そして、精神分析がヨーロッパ大陸の地理的領域を超えて、イギリスやアメリカにまで伝播していくきっかけになったのが、第二次世界大戦中の『ナチスドイツによるユダヤ人迫害(ユダヤ人の精神分析家の海外亡命)』であった。

S.フロイト本人も1938年にマリー・ボナパルトらの支援を受けて、フランスのパリを経由してイギリスのロンドンに亡命している。フロイトの高弟や高弟から教育分析を受けたユダヤ人の弟子たちも、少なからずアメリカやイギリスに亡命して精神分析の理論や技法を伝えているが、フロイトや弟子の著作を通じてアメリカの精神科医が精神分析を理解した部分も多い。

イギリスの精神分析は、フロイトの『正統派精神分析(自我心理学)』とは異なる発達早期の乳幼児の無意識を重視するメラニー・クラインらの『クライン派』、フロイトとクラインのどちらにも与さない『英国独立学派』に分かれて発展していった。

アメリカに渡った精神分析(psychoanalysis)は『力動精神医学(dynamic psychiatry)』と呼ばれることが多いが、20世紀半ばまでの米国の精神医学の二大潮流は、エミール・クレペリンをはじめとする『記述精神医学(descriptive psychiatry)』と精神分析の影響を受けた『力動精神医学』であった。

力動精神医学の最大の特徴は、精神現象(精神病理)を『複数の精神機能・心的装置』の力のせめぎ合い(相互作用)の結果として解釈することであり、人間の精神を絶えず変化して葛藤している『ダイナミック(動的)なシステム』として定義している。記述精神医学は反対に、精神現象(精神病理)を『現時点の状態の正確な記述』によって切り取って理解しようとするものであり、客観的に記述される精神現象は『静的な横断面』という形で理解されることになる。

力動精神医学は、人間の幼少期から青年期・壮年期・老年期までの歴史的なプロセスも重視するので、絶えず複数の精神機能の力のぶつかり合いや記憶・感情の葛藤によって変化を続ける『動的な縦断面』として人間の精神を捉えている。

posted by ESDV Words Labo at 14:39 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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