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2015年01月08日

[J.S.コーチンの精神保健的介入モデル:収容管理的な臨床と心理治療的な臨床]

J.S.コーチンの精神保健的介入モデル:収容管理的な臨床と心理治療的な臨床

アメリカの臨床心理学者・精神科医のJ.S.コーチンは、主著『現代臨床心理学(1980)』において、精神科医と心理臨床家がどのように患者(クライエント)にアプローチすべきかという『精神保健的介入モデル』を整理している。

臨床心理学の研究・実践の特徴とクライエントを見る異常心理学:2

J.S.コーチンは、精神保健・精神医療の領域において、患者(クライエント)に介入する『臨床モデル』を大きく二つに分けている。臨床モデルの一つは『収容管理的な臨床(精神科医が行う臨床行為)』であり、もう一つは『心理治療的な臨床(心理臨床家・心理セラピストが行う臨床行為)』である。

『収容管理的な臨床』と『心理治療的な臨床』の差異はまとめると以下のようになる。前者の項目が収容管理的な臨床、後者の項目が心理治療的な臨床になっている。

心理臨床は誰に対して実施されるか……病人としての患者(収容管理的な臨床)・個人としての人間(心理治療的な臨床)

問題の主な原因は何か……生物学的または器質的な原因,心理的または社会的な原因

クライエント(患者)の問題の本質や人格は変化できるか……生物学的・遺伝的要因も関係するので概ね大きな変化はできない,専門的技法や援助によってある程度まで変化できる

クライエント(患者)の状態はどのようなものか……自分一人では回復できない病気の状態・共感や尊重、受容などの対象となるべき心理的障害の状態

どういった治療・対処が行われるか……薬物療法や入院療法(収容管理的看護)・心理療法(個人療法、集団療法、家族療法)や環境調整(最適応や社会復帰のためのリハビリテーション)

誰が始めるのか……持て余す家族・専門家・司法の決定、動機づけのある本人・心配する家族(関係者)

どのような治療契約が結ばれるか……必要性が生じた時に非自発的な契約が結ばれる・本人の希望に基づいて自発的な契約が結ばれる

心理的・治療的な介入の主導権は誰にあるか……医師・心理臨床家(コメディカル)

専門家に期待される機能は何か……医学的・管理的な機能、直接的・共感的な機能

介入を行う場所はどこか……病院外来・入院病棟、病院・診療所・精神療法室・カウンセリングルーム

心理学者に期待されている役割は何か……心理アセスメント・心理テストによる診断の補助、心理療法家・人間的な理解者

心理アセスメントを実施する目的と必要性は何か……カテゴリー診断のために心理アセスメントを実施・クライエントの人格や人生の理解及び治療計画立案のために心理アセスメントを実施

介入に必要な専門知の領域は何か……精神医学(記述精神医学)・DSMの診断学(カテゴリー診断)、個人の人格や葛藤を理解するための力動的心理学(精神分析)・性格理論・心理療法の技法

心理的・治療的に介入する目標は何か……精神疾患という病気の改善・軽快・治癒、クライエントの人間的成長・問題解決の促進・メンタルヘルスの向上

posted by ESDV Words Labo at 04:29 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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