精神医学の治療関係論・対人関係論の視点3:乳幼児期のコミュニケーション形態の影響
乳幼児期のコミュニケーションは『幻想的な無意識+原始的な本能+非言語的コミュニケーション(泣き叫びや動作・表情・目線)』によって動機づけられているが、早期発達理論が示す精神発達の段階は『言語的・意識的・合理的なコミュニケーションに対する準備段階』として機能しているのである。
精神医学の治療関係論・対人関係論の視点2:M.マーラーやM.クラインの早期発達論との相関
乳幼児期の子供は、『言語・論理』よりも『表情・目線・泣き叫び・ジェスチュア・スキンシップ』などの情緒的な非言語的コミュニケーションをメインにして自分の要求や意思を親に伝えようとする。
そして、親からの愛情・保護・教育を与えながら順調に成長することによって、次第に『言語的コミュニケーションの論理度・抽象度(知的かつ説明的な意思伝達能力)』を高めていくことができるという精神分析固有の図式がそこにはある。
発達早期におけるコミュニケーション水準の発達は、『自己中心的コミュニケーションの社会化・合理化(抽象度・判断力の上昇)』という特徴を持っているが、人間は成人期の大人になって成長しても完全に『社会化・合理化されたコミュニケーション』だけで自我や自己愛を支えることはできない。
家族・恋人・親友などとのプライベートな人間関係やコミュニケーションの領域では、『非言語的・情緒的なコミュニケーション(幼児的な甘え・依存を満たして欲しいようなコミュニケーション)』が出現するのはそのためである。
S.フロイトの精神分析では、過去の精神発達段階へと心理状態や行動パターンが後戻りしてしまう自我防衛機制を『退行(regression)』という。“幼児化・感情的態度・甘えの強さ・依存性(執着性)”といった側面があるこの『退行』の度合いが激しくなったり、特定の発達段階に『固着(fixation)』してしまうと、さまざまな精神病理的な現象が現れてしまうのである。