インフォームド・コンセントの歴史と患者の自己決定権:1
医療におけるインフォームド・コンセント(informed consent)は『十分な病気(治療方法・病状の経過)の説明と納得に基づく医療』という意味であり、患者の意思や権利を重視しなかった『かつての医師の権威的・指示的な治療方針』に対する批判・反省から生まれた概念である。
インフォームド・コンセントは『がん治療・がんの告知』や『セカンド・オピニオン(現在の担当医とは異なる医師の診断・主張)』の文脈で言及されることの多い概念である。
インフォームド・コンセント(IC)は、『患者の納得を得た上で治療法を選択するという医療上の観点』と『十分な事前説明によって病気・治療のリスクに納得してもらう(患者・家族が納得できない治療を無理強いせずに医療訴訟のリスクを回避する)という法律上の観点』から近年では非常に重視されている。
インフォームド・コンセントの歴史は、アメリカの患者の人権保護運動と医療裁判対策に始まるが、そこに生命倫理学的・医療制度的な観点が取り込まれることによって、1970年代にインフォームド・コンセントという概念が確立することになった。ICは『医師の義務』と『患者の権利(選択)』から構成される概念である。
医師は患者に『病名・病状・経過予測・検査方法・治療方法』について告げて説明し、それぞれの検査法や治療法の長所・短所についても伝えて、患者がどの治療法を望むのかを選択できるようにしなければならないとされる。その意味では、ICは『患者の自己決定権』とも深く関わっている概念なのである。
がん治療の文脈では、患者の生死や推測余命に関係する『がん告知の瞬間・がんのステージの伝達』や『がん治療の選択肢・保険診療と自由診療の選択肢の呈示』などにインフォームド・コンセント(IC)の要点が置かれやすいが、ICで最も重要になるのは『医師‐患者の信頼関係の構築・維持』である。