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2015年02月10日

[ウィルフレッド・ルプレヒト・ビオンのグループ理論:作業グループと基本的憶測に基づくグループ]

ウィルフレッド・ルプレヒト・ビオンのグループ理論:作業グループと基本的憶測に基づくグループ

精神分析家のウィルフレッド・ルプレヒト・ビオン(W.R.Bion, 1897-1979)は、医療チームをはじめとする機能的な特徴を持つグループとして『作業グループ(working group)』『基本的憶測(basic assumption)に基づくグループ』を上げている。

リエゾン精神医療(リエゾン精神医学)におけるスタッフ間の連携・協力

『作業グループ(working group)』というのは、リエゾン精神医療の目的を果たすための専門性の発揮や相互的な協力・連携が上手くいっている現実的かつ機能的な成熟したグループのことであり、精神医療を含めてあらゆる組織的・集団的な職務や使命を達成するためにはこの作業グループの形成と維持が必要になってくる。

『基本的憶測(basic assumption)に基づくグループ』というのは、各メンバーの無意識的あるいは潜在的な意図・目的・意識が作用している複雑な精神力動が認められるグループのことであり、W.R.ビオンは基本的憶測に基づくグループとして以下の3つのタイプを上げている。

1.依存グループ……グループのメンバー(構成員)が、グループを統制する権威主義的なリーダー(能力・意識の高いリーダー)に全面的に依存しているグループである。基本的に、リーダーの能力や指揮、責任によって全ての仕事が遂行されていくので、リーダーが辞めたり意欲を無くしたりすると共通目的を持つ集団として殆ど機能しなくなってしまう。

2.闘争‐逃走グループ……グループのメンバー(構成員)間の協力・連携が上手くいっていないグループであり、グループのメンバー同士が『闘争(戦うべき敵)』や『逃走(逃げるべき合わない相手)』といった認知・印象を持ってしまっている。闘争‐逃走グループではグループのメンバー同士が『助け合うべき仲間』ではなく『戦ったり逃げたりしなければならない敵(ストレスの原因)』になっているので、共通目的を持つ集団として機能しないリスクが高い。

3.ペア・グループ……グループのメンバー(構成員)が、自分と気が合う相手とだけ付き合い協力するグループであり、『仲良し同士のペア(組み合わせ)』がいくつも作られるが、『ペア以外のスタッフ』との協力や連携が見られない。グループが抱えている問題やトラブルを自分たちが責任を持って主体的に解決しようとするのではなく、誰か特別な能力を持つ人物や救世主的な人物に助けてもらおうとする依存的な側面も強い。

これら3つの基本的憶測に基づくグループは『メンバーの無意識的な意図・目的・欲望』に振り回されて疲弊してしまうリスクの高いグループであるが、協力的ではないメンバーの『退行的な不安・挑発的な言動・無気力なサボタージュ』に巻き込まれないようにするためには、作業グループとして機能するようにしていくことが必要である。リエゾン精神医療を可能とする『作業グループ』として、医療関連スタッフの集団が機能するようにするために、作業グループとしての構造を維持する以下のポイントに注意すべきである。

1.グループの持つ目標・課題とそれを達成するための具体的方法の明確化と、明確化された共通の目標・課題・方法論の共有。

2.グループを構成するメンバーが、『自分に期待されている専門的な役割・目的・協力』をきちんと自覚してそれに相応しい行動・態度を取ること。

3.グループ全体の指示命令系統の整理(権威的なトップダウンか民主的なボトムアップか)と、その指示命令系統に各スタッフが納得しているということ。

4.グループ全体の意思決定のプロセスについて話し合いと同意を深めること。極端なトップダウンの命令ばかりをするのではなく、チーム・ミーティングを開催して各メンバーの意見・疑問・提案などを活かせるようにすること。

5.グループを取り巻く『政治的・経済的な要因』『経営者・管理者との人間関係』『患者・患者の家族との人間関係』にも注意して、グループの専門性・機能性を遺憾なく発揮できる好ましい周辺環境(経営状況)や関係者の理解を整えていること。

リエゾン精神医療は『チーム医療の協力体制・意欲の高さ・相互補完性』に支えられた総合的医療の取り組みであるが、W.R.ビオンのグループ理論を前提にすると、『基本的憶測の弊害』を緩和して『作業グループとしての機能的体制』を整備していくことが重要であり、そのことは精神分析的なスタッフ間の集団力学に配慮することにもつながっている。



posted by ESDV Words Labo at 16:49 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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